【短編】現代(白澤×鬼灯)
□禁忌術
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何となくだが、自分の死期を悟った。
他の鬼とは違い、私は元は人間。
ならば、もう一度死が待ち受けているのかもしれない。
それに、さっきの大王の言葉。
鬼火が弱まっていると言っていた。
死が近いということなのだろうか?
死・・・か
人間の頃に迎えた死は、それは恐ろしくて残忍なものだった。
かつて逃げ出した村の長によって私は殺された。
最期に見たあの人の顔は、笑っていたが酷く悲しげだった。
私との約束を守って『いってらっしゃい』をしてくれたが・・・
大好きな神様と長い間、引き離されることとなった・・・
だから、死は嫌いだ。
『・・・ずき!』
誰かが私を呼んでいる・・・?
嗚呼、この声は・・・
愛しくて堪らないあの人のもの・・・
『鬼灯!!』
目を開けると、自室の天井。
ちらりと横を見ると、切羽詰まったような白澤さんの顔。
「鬼灯・・・!」
白澤さんの手が頬に当てられる。
心地いい冷たさに目を細める。
「大王から大体のことは聞いた・・・」
「そう・・・ですか・・・」
「鬼火がお前の中で小さくなって震えてる・・・。お前は純粋な鬼じゃないから、制御が完璧には出来ていないんだ。」
「・・・」
「・・・断言は出来ないけど、そのままお前から鬼火が零れ続ければ、お前は・・・お前じゃなくなる。言ってしまえば、消滅する・・・」
瞳が見開かれていく。
死刑宣告をされた気分だ。
「とにかく、僕の家に・・・。詳しく診るから」
白澤さんはそう言って、獣へと姿を変えた。
私の着物の襟を咥え、背中に乗せる。
大好きな感触に、心なしか安心する。
その柔らかな毛に顔を埋める。
「いい?動くからね?しっかり掴まっててよ。」
「はい・・・」
私の返事を合図に、白澤さんは空へ舞いあがった。