【短編】現代(白澤×鬼灯)
□私の話、聞いてます?
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「あーーー!やっとできたーー」
匙を放り出して伸びをする白澤さん。
「ご苦労様です。随分、没頭していましたね。」
「そりゃあね、この薬はなかなか作る機会が無いからね。さて・・・」
戸棚から瓶を出してきて、手際よく薬を詰めていく。
「お代はいくらですか?」
「そうだな〜全部で500元くらい・・・2000円でいいよ。」
「わかりました。」
財布を取り出して、お代を白澤さんへ渡す。
「謝謝〜って、これ多くない?2000円で良いって。」
ほら、と余分に渡した2000円を私に差し出す。
「いえ、それはお詫びです。だいぶ複雑な薬をお願いしてしまいましたので。好きに使いなさい。」
「・・・じゃあ、今度3人で飲みに行こうか。」
「ええ。」
「あ、そうそう・・・」
「・・・?どうしました?」
何かを思い出したように手を叩く白澤さん。
「今年の運動会の行程表、出来たら送ってよね。健康診断の問診票は今週末までに桃タロー君に届けてもらうよ。」
「は・・・?あ、ええ。お願いします。」
随分前に聞いたことの詳細が今になって返って来た。
ああ、あと・・・と、更に口を開く。
「僕、牛丼の方が好きだな。それに、僕は豚じゃない。認めてもいない。従って、僕が豚丼を食べても共食いにはならない。あと、僕を食おうとするんじゃない。」
「な・・・貴方・・・」
白澤さんの目がだんだん細まっていく。
逆に、私の目は驚きに見開かれることとなる。
「そんなに驚いてどうしたの?はい、薬。」
私の手に薬が入った紙袋を握らせる。
「あ、鬼灯・・・」
そのまま、私の耳元に唇を寄せる。
「な・・・に・・・」
「お前の気持ち、聞けて嬉しいよ。鬼灯・・・好きだよ、愛してる・・・。」
「〜〜〜!!!白澤さんっ!」
私にぴったりくっ付いていた白澤さんの胸を押して距離を取る。
満足そうに微笑む白澤さん。
「聞こえてないと思ってたでしょ?ふふふっ。ぜーんぶ聞こえてたよ〜」
顔が熱くなっていくのが分かる。
「な・・・なんで・・・」
「可愛いよ、鬼灯。お前が僕にあんなに話しかけてくるなんて珍しいから、ちょっと悪戯しちゃった。」
ごめんね、と言いながら笑みを深める。
「ッ・・・貴方なんてもう知りません!」
一気に恥ずかしさが込み上げて来て、扉を乱暴に開けて、店を後にした。
「再見〜」と能天気な声が後ろから聞こえてきたが、無視した。
ああ、我ながら何と愚かなことを・・・
顔から火が出そうだ。
「・・・?」
携帯が懐で震えている。
確認すると白澤さんからのメール。
『我爱你』とだけ書かれていた。
金棒が肩からずり落ちた。
「・・・・・・はぁ・・・」
返事をせずに携帯を閉じ、金棒を担ぎ直して、閻魔殿へ向けてまた歩き出す。
閻魔殿に着くまでに、この顔の赤みを消さなければ・・・
全く、油断も隙もないですね。
白澤さん・・・。
終
白澤さんが鬼灯さんを蔑ろにするわけありません。笑