【短編】現代(白澤×鬼灯)

□私の話、聞いてます?
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「白澤さん。」

「うん。」

「私ね、今日の夕飯を牛丼にしようか豚丼にしようか迷ってるんですよ。」

「うん。」

「私の話、ちゃんと聞いてます?」

「うん。」

「白澤さんは、牛丼か豚丼どちらが良いと思います?」

「うん。」

あ、これはもう聞いちゃいないな。

とうとう「うん。」しか言わなくなった。

「豚丼はお好きですか?」

「うん。」

「共食いですね。」

「うん。」

「今、ご自分が豚だと認めましたね?」

「うん。」

「白豚さん。」

「うん。」

今度は、刻んだ生薬をすり鉢に入れてごりごり磨り潰している。

「貴方の肉で豚丼作ったらさぞや美味しいのでしょうね。」

「うん。」

笑いが込み上げてきたが、かみ殺す。

すり鉢を持って鍋の前に行き、中身を鍋に投入して掻き回している。

目元を見るといつもはない隈がうっすらできていた。

どうやら、疲れているのは嘘ではないらしい。

「白澤さん。」

「うん。」

「私のこと好きですか?」

「うん。」

「愛していますか?」

「うん。」

「私も愛していますよ。」

「うん。」

黙々と鍋を掻き回す白澤さん。

私はこれ以上何も言わずに、薬を作る白澤さんを眺めていた。
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