【短編】現代(白澤×鬼灯)
□鬼灯さん宅でお夕飯
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20時を過ぎた頃、厨房には既に誰も居なかった。
「久しぶりに、腕が鳴りますね。」
奴を唸らせてやる。
別の意味で。
まな板と包丁を出して、買ってきた材料を切っていく。
生姜、大蒜、葱、豆腐・・・
今日のメニューは(あんまり辛くない)麻婆豆腐です。
熱した鍋にごま油をひいて、生姜、大蒜、葱に火を通してから、ひき肉を投入。
そこで、奴が来た。
桃太郎さんも一緒だ。
「おい!そこの鬼!!なんだよこのメール!」
「お、落ち着いて下さい白澤様!」
開口一番、そう叫んだ白豚を桃太郎さんが宥める。
奴は構わず私に携帯を突き付ける。
『おい、豚。餌食わしてやるから、20時半に来い。追伸:桃太郎さんもお暇でしたら是非いらしてください。』
「何か不都合が?」
「不都合だらけだわ!何?!この桃タロー君との扱いの差!?」
「お前なんかこれくらいの扱いで十分。」
「僕をなんだと思ってるんだ!!!」
「豚。」
「ちげぇよおおおおぉぉぉ!!!神獣なの!神なの!偉いの!」
「ハッ」
「ちくしょーー!鼻で笑いやがった!」
「五月蝿い豚さんですね。もうすぐできるから大人しくしてろ。」
奴を一蹴し、また鍋に向き直る。
「何作ってるんですか?」
桃太郎さんが寄って来た。
「麻婆豆腐です。最近、作り方を覚えましたので。」
「そうなんすね〜」
桃太郎さんと話しながら火が通り始めたひき肉を眺める。
そろそろ豆腐を・・・
「何?何?お前辛いのダメなのに麻婆豆腐なんて作れんの??」
嫌味ったらしい顔で近づいてくる豚。
「寄るな。あっちで大人しく・・・ああ、豚ひき肉になりに来たんですか?それでしたら歓迎します。」
包丁をチラつかせる。
「だから僕は豚じゃねぇって何度言えば分かるんだよ?!てか今、その鍋で炒めてんのひき肉じゃないの??!もう要らないよね?!」
「生憎、豚語は分かりませんので。」
「はいはい、向こうで大人しくしてましょ。」
桃太郎さんに引きずられていく白豚。
「さて、」
豆腐と調味料を入れて煮立たせて完成。
我ながら上出来だ。
これは、お客様の桃太郎さんと私の分。
あとは・・・
横に放ってある例のビニール袋を見る。
「豚の餌でも作りますか。」
二人に聞こえないよう、ぽそりと呟く。