【短編】現代(白澤×鬼灯)
□鬼の血
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閻魔殿に着くと、真っ直ぐ閻魔大王の元へ向かう。
「おや、白澤君。君がこっちに来るなんて珍しいね。」
大王は僕を見つけると、裁判台から降りて歩み寄って来た。
「薬を届けに来たんです。あいつは部屋ですか?」
薬袋を大王に見せて言う。
「鬼灯君なら、少し前に書庫の整理をするって言って出て行ったよ。」
「そうですか。じゃあ、そっちに行ってみます。」
「うん。あ、第二書庫の方ね。」
「分かりました。」
手を振る大王に会釈して、その場を後にする。
「返事がないわけだ。」
一人ごちて書庫を目指す。
薄暗い廊下を黙々と進む。
この閻魔殿には二つの書庫がある。
第一書庫は地獄の獄卒なら誰でも出入りでき、貸出も行っている。
しかし、僕が目指している第二書庫は出入りできる者が限られている。
地獄の重要機密を知る者、つまり十王やその補佐官、あとは神の類いだ。
書庫の場所も非常に入り組んでおり、ただの獄卒ではまず辿り着けないだろう。
そうこうしている間に書庫に着いた。
厳重に閉じられている扉をゆっくり開く。
素早く中に入り、扉を閉める。
「鬼灯ー?」
僕は鬼灯の姿を探した。
灯りが僅かしか灯っていない為、中は薄暗い。
「白澤さん・・・?」
鬼灯の声がした。