【短編】現代(白澤×鬼灯)
□鬼の血
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午後の昼下がり。
今日は忙しく、午前中から黙々と部屋の真ん中で薬の調合をしている。
「よし、これで最後・・・っと。」
最後の瓶に薬を詰め、栓をする。
今一度、ラベルと中身が間違っていないか確認し、紙袋に入れていく。
「終わった〜」
椅子から勢いよく立ち上がり、伸びをする。
「お疲れ様です、白澤様。」
生薬を刻んでいた桃タロー君が労りの声を掛けてくれる。
「ありがとう、このまま地獄に配達行ってきちゃうね。」
今まで作っていたものは全てあいつ、鬼灯からの依頼だった。
「あ、配達なら俺行きますよ?」
「いいの、いいの。あいつと話したいことあるし。序でだから行ってくるよ。」
腰を上げかけた桃タロー君を制す。
「分かりました、お気を付けて。」
桃タロー君はまた作業を再開した。
「うん。夜には戻るから、お留守番よろしくね〜」
鍋を片付けてから、薬袋を持って店を出た。
歩きながら携帯を取り出し、鬼灯宛てのメールを作る。
『今から薬届けに行くから部屋に居ろよ。』
と打って送信。
返事は、ない。
いつもの事だから別に良いけど。
地獄へ繋がる門が見えてきた。
相変わらず、悪趣味な造形だ。
通路を進むにつれ、濃くなる血の匂い。
あー、やだやだ。
気味が悪い。
僕は足早に通路を抜けた。