【短編】現代(白澤×鬼灯)
□この神様には適わない。
3ページ/5ページ
「・・・・・・。」
面白いものが見れたし、この辺で・・・。
白澤さんが私の耳元に唇を寄せる。
「はくたくさ・・・」
「僕も、お前なんか大嫌いだよ。」
私の言葉を遮って、耳元で淡々と告げた。
「え?」
それだけ言うと私から離れ、背を向けた。
「ごめん。こんな散らかっちゃったし、やっぱり今日中は無理だ。今度持って行くから、帰ってくれない?お前の気持ちも分かったし。」
「・・・。」
頭が上手く働かない。
予想外過ぎて。
すぐに嘘だと見抜いて笑ってくれると思っていた。
白澤さんのあの目は・・・
本気だ。
「あの・・・」
白澤さんは無言で私の前を横切ると、出入り口の扉を開けた。
「ほら、早く帰れよ。今日休みじゃないんだろ?」
「・・・。」
「僕が嫌いなんだろ?出てけよ。僕、大嫌いなお前といつまでも一緒に居るほど暇じゃないんだ。」
動けないでいる私に更に出て行くように促す。
「あ・・・」
ああ、しまった。
怒らせてしまった。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
今考えたら、こんなの下卑ている。
この人への想いを、こんなに大切な感情を、このような戯れの種にするなど・・・
いくら恋仲の関係でも・・・
こんな・・・
穏やかなこの人も怒るに決まっている。
ああ、なんて愚かなんだ・・・
「白澤さん・・・」
「・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
俯いて唇を噛む。
傷つけてしまった。
いつも私に想いをありのままに語ってくれる、優しい神様を・・・。
椅子から立ち上がれない。
「すみま・・・せ・・・。」
自然と謝罪の言葉が唇から零れ落ちる。
白澤さんの靴音が近づいてくる。