【短編】現代(白澤×鬼灯)

□この神様には適わない。
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極楽満月が見えてきた。

知識の神なのだから、今日が何の日かくらい知っているだろう。

どんなふうに呆けてくれるか楽しみだ。

店の前まで来ると、扉に手を掛け、ゆっくり開ける。

「お邪魔します。」

「ああ、いらっしゃい。」

店主はいつも通りに迎えてくれた。

「すみませんね、急に連絡して。」

「今日やることは終わってるから別にいいよ〜」

白澤さんは私に座るように促すと、茶器を持ってきて茶の支度を始めた。

「このリストに載ってるのをお願いしたいのですが。」

リストを懐から取り出して、白澤さんに差し出す。

奴は茶を淹れながらそれを受け取り、遠目に眺めた。

「んー、これ全部在庫あるから今日渡せるよ。はい、お茶。」

「そうですか、助かります。」

差し出された茶を受け取り、一口啜る。

「ちょっと待ってろよ。」

白澤さんはリストを持って立ち上がり、薬棚に向かった。

「これさ、感冒薬ばっかだけど、風邪流行ってるの?」

「ええ、若い獄卒が立て続けに風邪を引いていましてね。」

「ふーん」

次々と引き出しを開けて、書かれている薬を取り出していく。

・・・・・・。

そろそろ、か・・・?

「白澤さん。」

「あん?何・・・」

「前々から思っていましたが・・・貴方なんて、大嫌いです。」

ガタン・・・ッ・・・バサバサバサ・・・

引き出しが棚から落ちて中身が散乱した。

奴が抱えていた薬も全部床へ。

「何してるんです・・・」

「・・・・・・」

酷く驚いた表情でこちらを見ている。

「何をそんなに驚くことがあります?」

また一口茶を啜る。

「ほ・・・ずき・・・」

何と滑稽な様だろうか。

さあ、どう返してくるだろうか。

いつもは涼しい顔で澄ましてるこの神が私の一言で動揺している。

「はい?」

白澤さんは薬を拾うこともせずに、私の方に歩み寄って来た。

「僕は・・・」

「何ですか?」
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