【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□呪いの瞳と無言の願い
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それから、彼は私に色々な話をしてくれた。


ここは天界という場所で、この地の裏側には地獄という場所も存在していること。


そして、


彼の正体は、天界では名高い吉兆の象徴である神獣白澤であるということ。


『神様、なのですか・・・?』


『うん、そうだよ。』


『・・・・・・。』


『どうしたの・・・?』


彼が神様なんて・・・、


「神に呪われた子」という肩書を背負って生きてきた故、無意識のうちに「神」という言葉に敏感になっていた。


『あぁ・・・その目のことかい?』


『・・・・・・。』


指摘されて、咄嗟に顔を背けた。


『心配しなくていいよ。神は無作為に人を呪ったりはしないから。それは呪いでも何でもないよ。』


『・・・・?』


涙が零れそうな目尻に指先が当てられる。


『僕は好きだよ、その真っ赤な瞳。熟れた鬼灯のようで綺麗だ・・・』


『・・・・・・本当ですか?』


『うん、君の周りの人間が偏見を持っていただけだよ。』


そう諭されて、ようやく安心することが出来た。


『だから、もう自分を卑下するのは止しなさい。・・・君はむしろ・・・いや、何でもない。』


『・・・?』


『・・・。』


『・・・・・・。』


黙ってしまった白澤に自分も口を噤む。


彼は何を言おうとしたのだろう?


少しの沈黙の後、白澤が口を開いた。


『ねえ、折角だからこのまま家で暮らしなよ。僕も一人ぼっちで退屈してたんだ。』


『え?』


突然の提案の驚いた。


『嫌かな?』


『い、いいえ・・・!ありがとうございます・・・』


行く宛ての無かった私に手を差し伸べてくれたのだ。


こんな光栄なことは他にないだろう。


『ふふっ・・・明日から楽しくなりそうだ。』


長い袖で口元を隠して無邪気に笑う彼に、自分の頬も自然に緩んでいくのが分かった。


そして、神様との不思議な生活が始まったのだった。


彼は薬師としても名が知られているようだ。


毎日、薬作りに勤しんでいる。


そんな彼の姿を家の手伝いをしながら見つめていた。


『さ、一緒に出掛けようか。』


仕事の合間を縫っては、賑やかな町まで連れ出してくれた。


私の手を優しく握ってくれたり、頭を撫でてくれたり・・・。


優しい兄のように私に接してくれた。


かと思えば、煌びやかな服を身に纏い神としての務めを果たしに天の宮殿に赴くこともあった。


その表情は、私に向ける優しいものではなく、少しの恐れを抱くほどの厳しい表情だった。


でも、勤めから戻って来ると・・・


出迎えた私を、服に皺が寄るのも構わずに抱き上げる。


『ただいま、遅くなってごめんね。明日はちょっと早起きして、遠くまで出かけようか。』


といった具合に、いつもの柔らかく優しい表情に戻るのだ。


そんな彼を心の底から慕い、尊敬していた。
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