【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□呪いの瞳と無言の願い
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目を開けると、世界が一転していた。


目の前には鮮やかな花と柔らかい緑を湛えた木々が広がっていた。


先ほどまであんなに暗く、騒がしかったのに。


・・・頭の痛みも消えている。


身を起こして、辺りを見渡してみる。


『・・・?』


顔を横に向けると、美しい湖が目に入った。


『わ・・・』


見たことの無い景色に、好奇心と少しの恐怖心が生まれる。


ここは一体どこなのか。


上を見上げると、青く澄んだ空がどこまでも続いていた。


『・・・・・・・・・・・・。』


『君、独りなのかい?』


『・・・!』


突然、隣で声がした。


慌てて視線を戻すと、目の前には若い男の人が立っていた。


『まだ幼い鬼の子だね。・・・迷子かい?』


『お、に・・・?』


『君のことだよ。その耳と角を持つ種族は鬼しかいないからね。』


『みみ・・・つの・・・?』


おもむろに、湖を覗き込む。


『ぁ・・・』


水鏡には、変わり果てた自分の姿が映っていた。


額の真ん中には小さな角が生え、耳の先は尖っていた。


『・・・私、さっきまで人間だったのに・・・どうして・・・』


自分の額と耳を触り、改めてその変化に驚く。


『人間から転生してここに来たんだね。・・・鬼に生まれ変わったということは・・・
そうとう強い恨みを持っていたはずだ。・・・何か心当たりはない?』


恨み、・・・そうだ・・・、


『・・・両親を理不尽な理由で殺されたのです・・・私が、こんな瞳を持って生まれて来たからッ・・・神様に、呪われてるから・・・ッ』


『・・・・・・。』


周りの人間への恨みは勿論あるが、何より自分が恨めしい。


私さえ生まれていなければ、こんなことにはならなかった。


『・・・私、ッ・・・自分が恨めしいです・・・私の所為で・・・ッだから、』


唇を噛み肩を震わせて泣いてると、涙が伝う頬を温かい指先がなぞった。


『・・・泣かなくていいよ。悪いのは君でも、君の両親でもないんだ。・・・僕には分かるから・・・ね?』


『あの・・・、貴方は・・・』


『うん、教えてあげるから・・・』


自分の前に手が差し伸べられる。


『・・・・・・。』


『それとも、ここに居たいかい?』


悪戯っ子のような笑いを含んだ声と優しい表情。


『・・・・・・。』


涙を拭って、目の前に差し伸べられた手を取った。


その手が陽だまりのように温かかったことをよく覚えている。


『いい子・・・さあ、一緒においで。』


これが、私と彼との最初の出会いだった。




















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