【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□皮肉な出会い
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あまりのことに、暫く口を開けないでいた。
「隠していてごめんね。」
「い、いえ・・・」
明らかに動揺しているのが嫌でも分かった。
「君の言うとおり、君の両親を奪ったのは運命を操る神だというのは間違いじゃないよ。命を奪い取る神は幾らでも居る。」
苦しそうな表情の彼が、「でもね、」と続ける。
「すべての神が命を奪うわけじゃない。命を与える神も居れば、傷を癒す神も居る。」
「・・・・・・・・・。」
「苦しい言い訳なのは分かってる。でも、一種の神として伝えておきたかったんだ。」
そのまま、彼は腰を上げる。
「もう、ここに来るのは止めるね。お父さんとお母さんを大切にするんだよ。」
長い裾を翻し、去ろうとする彼の袖を引いた。
「どうしたの?」
彼が驚いた表情でこちらを見ていた。
あんなに忌み嫌っていた神が目の前に居るのに、何故か憎悪が生まれない。
「待ってください、まだ貴方のこと・・・何も教えてもらっていません。」
「僕のことを知りたいの?・・・君が嫌いな神だよ?」
「貴方が残酷な神様だとは思えません。・・・貴方は、どんな神様なのですか?」
驚きに見開かれていた彼の瞳が、いつもの柔らかさを取り戻していった。
「・・・全てのことを知り、全てのものを愛する・・・知識と吉兆の神獣、白澤だよ。」
「はくたく、さま?」
「うん、君が初めてここに来た日からずっと見ていたよ。」
「ずっと・・・?」
「うん、一人取り残されて寂しくて怖くて泣いてる君をずっと・・・」
「・・・!」
突然、手を引かれ広い胸の中に抱き込まれた。
「あ、あの・・・!」
「辛かったね・・・ずっと我慢して、本当に強い子だ。」
赤子をあやすように背を優しく叩かれる。
「お前に枯れることの無い永遠の吉兆をあげるよ。両親の温もりには劣るけど・・・君に何かしてあげたいんだ。」
「ありがとうございます・・・私、貴方なら好きになれる気がします。」
遠慮がちに手を回し、縋り付いた。
「謝謝、嬉しいよ。」
「あの、ずっとここに居ますか・・・?」
「うん、ずっと居るよ。」
白澤様は優しい眼差しの儘、私の髪を梳いている。
「・・・一つだけお願いがあるのですが・・・」
「うん、言ってごらん?」
「もうじき、地獄での勤務が始まるので、ここに来るのが難しくなりそうなのです。ですから、私の代わりに両親の墓を守ってくださいませんか?」
地獄での勤務が始まった後の墓の管理をどうしようか悩んでいたところだ。
「僕で良ければ喜んで。」
「本当ですか?!嬉しいです。」
白澤様の腕から離れ、墓前へ向き直る。
「父さま、母さま・・・暫くは白澤様が守りをしてくださいます。私も時間が空いた時には参りますので、安心してください。」
よくよく考えれば、かなり皮肉な話だ。
あんなに嫌っていた神をこうも簡単に受け入れてしまうなんて。
でも、大丈夫。
あんなに優しい目をした方を未だ嘗て見たことがない。
だからこの方・・・白澤様なら信じられる気がする。
「よろしくお願い致します、白澤様。」
「うん、任せて。」
一旦ここで切ります。
あと1話で終わる予定です(笑)