【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□ちいさないけにえ
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事の発端は、すべての神々が集まる会議の議題だった。

「既に聞き及んでいる者も居るだろうが・・・ここ数百年の間で、現世の治安及び政が著しく悪化しておる。」

天帝が重い口を開き、皆に語りかける様に言葉を紡ぐ。

「倭国の朝廷に暗雲が渦巻いているのが見える。醜い権力の奪い合いで、罪のない民が苦しんでおるのだ。」

その話なら僕も聞いている。

何でも、君主を取り巻く官吏どもが己の地位の為に、民を捨て置いて争っているらしい。

朝廷の監督が甘くなったことをいいことに、悪行に走る者が後を絶たないという。

略奪や密売、窃盗等等。

まあ、民を統べる朝廷が本来の責務を見失っていては当然だろう。

金や己らの地位や名誉に目が眩み、民など眼中に無い。

上層の人間に死ぬ思いで働いて貢いでいる民たちが不憫でならない。

「そこで、更に詳しい現状を把握するために
お主らに現世の調査に出て欲しいのだ。」

「先ずは中層から下層の民を苦しみから放ってやる必要がある。全ての街や村で民の暮らしを記録して参れ。」

鋭い眼差しが僕らに突き刺さる。

「よいか、現世の民も我らの愛子同然。このまま捨て置くわけにはいかん・・・気を抜くでないぞ」

椅子から立ち上がった天帝は手を打ち鳴らす。

「明朝から発つがよい。今後の改善に繋がり得る情報を持ち帰るのだぞ。」



















天帝の指示通り、朝一番で現世に向けて出発した。

獣に姿に戻り、天界の雲から飛び降りる。

昨日の天帝の言葉が蘇る。

「・・・・・・。」

比較的平安な倭国でまさか、こんなことが起きているとは。

人間とは、金と権力を前にすると自我を捨ててまで我が物にしようとすると聞いたことがあるが、本当だったとは・・・

現世への門をくぐり、高度を下げていく。

宮廷や村が見えてきた。

獣から人へと姿を変え、人里から離れた森へと降り立った。

日の光と鳥の囀りが心地良い。

天界に負けないくらいの穏やかなこの地が足元から少しずつ崩れ落ちていると考えると背が凍えた。

「とにかく、街か村に行ってみよう。」

飛んでいる際に見つけた村に行くことにした。

自分の目でしっかりと確かめなくては。

森の木々をかき分けて、村を目指した。

「何だあれ・・・?」

森を進んでいくと、開けた場所に出た。

その中心に櫓のようなものが佇んでいた。

何もない森に造られたその櫓は酷く不気味に思えた。

周りには酒や果物が置いてある。

何かを祀っているのだろうか?

こんな淋しい所に・・・?

その櫓が気になったが、今は真っ直ぐ村に向かおう。
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