【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□地獄へ戻る鬼
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「白澤様、」

「ん、なぁに?」

「この項がよく理解出来なくて・・・」

「ああ、転生ね。これは難しいよね〜でも、とても重要なことだからちゃんと覚えないとね。さ、近くにおいで。」

鬼灯を膝の上に乗せて、先まで鬼灯が見ていた本の項を開く。

「いい?転生と言うのはね、地蔵菩薩の力で死者を再び現世に送り出すこと。それでね・・・」

文字を辿る僕の指を目で追う鬼灯。

僕の言葉に相槌を打ち、書に書き込みをしていく。

鬼灯がここに来てから今日で100年になる。

初めて会った頃より、幾分か背が伸び幼さが消えつつある。

でも、僕からしたらまだまだ赤子のようなものなので、ついついこうやって膝に乗せたりして甘やかしてしまう。

「こんなものかな、まだ分からない所はある?」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。あ、そう言えば・・・」

鬼灯が何かを思い出したように呟く。

「ん?」

「白澤様、先日の文に書かれていた件ですが・・・」

「ああ、あれね・・・」

先日、宮殿から文が送られてきた。

閻魔大王がかなり尽力したようで、少しずつではあるが、地獄が機能し始めているそうだ。

天帝が鬼灯の存在を閻魔大王に話したらしく、近々迎えに来るらしい。

実践教育ということになるので、天帝も僕も賛成だ。

勿論、鬼灯も了承している。

「近々、というのはいつ頃なのでしょうか?」

「うーん、そう遠くない話だとは思うんだけど・・・僕と離れるの寂しい?」

冗談交じりに訊いてみる。

「勿論です・・・長い間お世話になっている白澤様と離れてしまうなんて・・・」

少し悲しげな表情で僕を振り返る。

「僕も寂しいよ、しばらくはこうして抱き締めてあげられないなんて。でも、」

「地獄の為、ですか?分かっています・・・」

口振りがだいぶ達者になって来た。

月日が流れた証拠なんだな・・・

「会えない代わりに、毎月文を書きます。そして、地獄が安定したらまたここへ来ても良いですか?」

「当たり前じゃない。いつでも待ってるよ。」

目の前の柔らかい髪に指を通す。

「はい・・・」

少し恥ずかしそうに目を逸らしてしまった。

二人きりで過ごせるのも、あと少し。

でも、永遠の別れじゃない。

離れても、僕は変わらずこの子に愛情を与え続ける。

言葉でなくても、手段はいくらでもある。

だから、大丈夫。

「白澤様、もう少し勉強に付き合っていただけませんか?」

「うん、いいよ。」

僕はお前に恋してる、そんなこと言ったらお前はどんな顔をするのかな。

僕がお前に与えてきた愛情が持つ意味を、お前はまだ知らないだろう。

ううん、知らなくていいよ。

いずれ分かるから。

お前が再びここへ来たときに、全てを教えてあげる。

僕がお前に抱いている気持ちを・・・

拒まれたっていい。

僕はお前が地獄を担ってくれるだろうと思って一緒に居ることを決めた。

でも、それは最初だけ。

次第に僕はお前に惹かれていった。

お前の過去がどんなものであろうが関係無い。

お前だから好きになったんだよ。

過去に受けた傷は僕が癒してあげる。

欲しいものは何だってあげる。

だから、いつかまた僕の元に戻ってきて?

・・・なんて女々しいのだろう。

目の前の鬼灯が愛しくて愛しくてどうにかなりそう。

少しだけ逞しさを覗かせている身体をそっと抱き締める。

「白澤様・・・?」

「僕は待ってるからね・・・きっと、会いに来てね。」

「分かりました、約束します。」

腕の中の鬼は柔らかく微笑んだ。

そして・・・・・・
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