【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□天帝からの忠告
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天帝についていくと、侍女たちに囲まれている鬼灯が居た。

「あ・・・天帝、白澤様お話は終わったのですか?」

「ああ、今し方な。それにしても、随分豪勢だな。白澤も座れ。」

「はい。」

僕は鬼灯の隣に座った。

机を見ると、豪華な茶器と、飾り切りが施された果物が所狭しと並んでいる。

「天界の果物は美味であろう?」

「はい、とても!」

鬼灯は綺麗に皮が剥かれている仙桃に手を伸ばす。

「ほう、仙桃が気に入ったか。」

「はい!今まで食べていた桃より甘くて美味しいです!白澤様も食べますか?」

小さな指が仙桃を摘んでこちらによこす。

「ありがとう、いただくよ。」

鬼灯から仙桃を受け取って口に含む。

仙桃は天の恵みをふんだんに受けているので、香りが高く、蕩けるほどの甘みを持つ。

現世の桃も好きだが、やっぱり僕は仙桃の方が好みだな。

「うん、美味しいね。」

にこにこ微笑む鬼灯の頬を撫でる。

「本に、誠の親子のようだな。」

僕らのやり取りを見ていた天帝は笑を含んだ声でそう言った。

「そう仰っていただけて光栄です。」

心から嬉しくなって、天帝に礼を言う。

「白澤様、これも美味しいです!」

「うん?どれどれ〜」

鬼灯に勧められるがままに次々と果物を摘んでいく。

その様子を天帝と侍女たちが声を立てて笑っていた。









「長々と引き留めて悪かったな。」

「いいえ、勿体無いほどのもてなしに感謝しております。」

「気にするな。それより、先に申したこと…決して忘れるでないぞ。まあ、心配など無用かとは思うがな。」

天帝はそう言いながら、僕の背中で寝息を立てている鬼灯を見やる。

「畏まりました。どんなことがあろうと、この子を守り抜きます。」

「ああ。ではな、気をつけて帰れよ。」

右手を挙げて僕らを見送る天帝。

僕は会釈して、鬼灯を背負い直して、飛び立った。

この先、どんなことがあるかなんて分からない。

鬼灯の鬼火は脆く壊れやすいことを知った。

この先…この子が、苦しみに晒されることがあるかもしれない。

死に値するほどの苦しみが鬼灯を襲ったら…

そのときは、今度こそ…

この神の力でお前を……

「さあ、帰ろう…鬼灯。」

背中で眠る愛しい子を揺すりながら帰路につくのだった。









次作、【現代】白鬼で終わります。
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