【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□天帝からの忠告
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天帝から鬼灯を天界へ連れてくるように言われて一週間。

鬼灯の生活にも余裕が出てきた。

そして、今日は天帝の御前に鬼灯を連れて行く日だ。

その為、朝から慌ただしい。

いつもより四半刻ほど早く鬼灯を揺すり起こす。

まだ眠そうに目を擦る鬼灯の手を引いて台所へ向かい、朝食を食べさせる。

だんだん目が冴えてきて、今日の予定を思い出したのか、黙々と朝食を食べ始めた。

その間に、布団を片付け、洗濯物を庭に干す。

台所に戻ると、鬼灯が流しで洗い物をしていた。

「鬼灯、着物着せてあげるからこっちにおいで。」

「え、でもまだ・・・」

鬼灯は手を止めて僕を振り返る。

「そんなの後で良いよ!ほら、おいでおいで〜」

もう一度手招きして鬼灯を呼ぶと、今度は素直に走り寄って来た。

そんな鬼灯に真新しい礼服を着せていく。

「・・・いつもの着物ではないのですね。」

「そうだよ。今日は偉い人に会いに行くからちゃんと身だしなみを整えないとね。」

鬼灯は着物を着せられていく様子をじっと見ていた。

「はい、出来た。帯はきつくない?」

「ありがとうございます。大丈夫です!」

一歩踏み出そうとした鬼灯は長い裾に足を取られ、派手に音を立てて転んだ。

「ああ、ほら大丈夫?どこも痛くない?」

床に這っている身体を抱き上げて、服の乱れを直してやる。

「裾が長くて歩きにくいです・・・」

「着慣れてないもんねぇ・・・でも、手を繋いでいてあげるから大丈夫だよ。」

ぽんぽんと鬼灯の背をあやすように叩く。

「・・・はぃ。」

少し間を置いた後に小さな返事が帰って来た。

転んだことが恥ずかしかったのだろう。

僕にしがみ付いて離れない。

「ふふふっ。じゃあ、行こうか。」

鬼灯を抱いたまま庭へ出る。

「いい?しっかり僕に掴まっててね。」

「はい。」

鬼灯を片腕でしっかりと抱き、もう片方の指先に神気を宿し、額に宛がう。

風を纏い、そのまま上空へ飛び上がった。

「わ・・・!」

初めての感覚に、鬼灯は驚いたような声を上げ、更に強く僕にしがみ付く。

「も〜っと高く上がるよ。怖かったら目を閉じててね。」

僕の言葉にすかさず目を閉じ、僕の胸に顔を埋める。

そんな鬼灯に目を細め、天界を目指して更に高度を上げた。











「鬼灯?着いたよ。」

目をきつく閉じたままの鬼灯の頬をつつく。

恐る恐る目を開ける鬼灯。

「じゃあ、ここからは一緒に歩こうか。」

鬼灯を地面下ろして手を繋ぐ。

「ここが天界ですか?」

「そうだよ、本来僕はここの住人なんだ。現世より過ごしやすいよ。」

天界は常春の為、気候が良く、至る所に色とりどりの花が咲き誇っている。

「綺麗ですね・・・こんな場所があったなんて知らなかったです。」

「現世で生を持つ者はここに来れないからね・・・」

全ての生き物は、死んだ後、俗にいう「あの世」と「この世」との間を行き来できるようになる。

鬼灯も死んだことによって、それが可能になったのだ。

「お前がもう少し大きくなったら、現世を離れてこの天界で家を構えようと思ってるんだ。」

「今度はここに住むのですか?」

「いずれはね。鬼灯は現世の方がいいかい?」

「私は、白澤様が側に居て下さるのなら、どこだって構いません。」

繋いだ手をきゅうっと握られる。

「ありがとう、鬼灯。ずっと一緒だよ。」

小さな手を握り返す。

自然と笑みが零れてくる。

「白澤様!おいででしたか。気が付かず申し訳ありません・・・」

僕たちに気付いた侍女は、慌てた様子で駆け寄ってきた。

「ああ、天帝にお目通り願いたい。取次ぎを。」

「畏まりました。少しお待ちください。」

僕の一言に、その侍女は頭を下げて宮殿の中に入って行った。

「あの・・・白澤様・・・天帝とはどなたですか?」

「この世界の全てのものを統べるお方だよ。」

「・・・そのようなお方とどのようなお話を?」

鬼灯が不思議そうに僕を見上げる。

「天帝は鬼灯の顔をご覧になりたいそうだよ。」

「私の顔をですか?何故・・・?」

「僕が一人に執着することは無いに等しいからね〜天帝も珍しく思われたんだよ、きっと。」

「・・・そう、ですか・・・」

鬼灯は恥ずかしそうに俯いてしまった。

「ふふふっ。」

そんな鬼灯が可愛くて、頭をくしゃりと撫でる。

「白澤様、お待たせいたしました。どうぞお入りください。」

「ありがとう。さ、行こう。」

鬼灯の歩幅に合わせて、ゆっくりと宮中を歩く。

先に歩いていた侍女が一際大きな扉の前で立ち止まる。

「こちらのお部屋です。」

「うん、助かったよ。」

侍女は深々と頭を下げ、下がった。

鬼灯も釣られるように頭を下げていた。

それに小さく笑った後、重い扉をゆっくり開いた。
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