【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□鬼の子
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天国は今日も晴天。

いつもの様に早起きをし、うさぎ達に挨拶して、草と水をあげる。

いつもの様に台所に立ち、朝食の支度をする。

秋めいてきて涼しくなってきたので、今日は生姜と卵で雑炊を作ろう。

「もうすぐできるからね〜」

そう呟きながら鍋をかき混ぜる。

「うん、美味しそう。」

火を止めて、小さなお椀によそう。

そのお椀を小さな匙と一緒に盆に乗せる。

最後に、桃の花びらを浮かべた緑茶を添える。

それを持って、庭に出る。

「おはよう、丁。朝餉だよ。」

静かに佇む墓の前に来ると、持って来た盆を墓前に置く。

「はい、今日は少し寒いから温かい雑炊にしたんだ。たくさんお食べ。」

美しく咲き誇るコスモスと桔梗が風に乗ってゆらゆら揺れる。

丁とうさぎが眠るこの花壇は一年中、季節に合った花が美しく咲くように毎日の手入れを欠かさない。

今はコスモスと桔梗が花壇を埋め尽くしている。

「昨日ね、街に行ったらこんなのが売ってたんだ。」

懐から漆塗りの櫛を取り出して、盆の隣に置く。

樫の木を削って造られた櫛だ。

漆の質は非常に上質で斑がなく、小さくも存在感のある百合の飾りが美しい。

「百合の飾りが綺麗でしょ?丁の髪は長いから、使うといいよ。」

墓石を優しく撫で、微笑む。

「じゃあ、そろそろ行くね。また昼餉持って来るよ。」

そう言って踵を返す。

「お昼は何がいいかな〜?」

一人ごちながら、家へと足を進める。

この後、仕事をして昼餉を作り、丁の所へ持って行く。

そしてまた仕事をして、買い出しに行き、夕餉を作る。

夕餉を持って行き、今日一日のことを丁に話し、おやすみを言う。

その後、風呂に入って眠る。

これが、丁が居なくなってからの僕の一日だ。

丁がこの世を去って、もう3年が経つ。

この腕の中で息を引き取ったあの日から、永遠にこの子の側で生きていくと決めた。

毎日、欠かすことなく丁の墓へ赴いている。

どんなに話し掛けても、贈り物をしても、返事はない。

でも、それでいい。

必ずまた会える、そう信じているから。

「さて、僕も食べよ。お腹空いた〜」











少し急ぎの件を片付けていたとき、麒麟が訪ねてきた。

僕は、書き物の手を止めて彼を部屋へ招き入れた。

「白澤よ、変わりはないか?」

「うん、頻繁に来てもらって悪いね。」

彼は、丁が死んでから何度かここを訪れている。

「天界は特に目立った問題はないな。強いて言えば・・・」

麒麟から天界に関する引き継ぎを受ける。

その後、処理し終わった案件を彼に預け、新たな仕事を受け取る。

「ときに白澤・・・天帝の・・・」

「僕の答えは変わらないよ。」

きっぱりと撥ね退ける。

丁が死んでから、僕は現世に居続けている。

よっぽどのことがない限り、天界には戻らない。

だから、ここ3年の間は月に1度、麒麟か鳳凰が天界の引き継ぎに来てくれている。

もちろん、天界からの仕事は期限までにこなしているから問題はないはずだ。

天帝からは何度も戻ってくるように言われているが、戻る気はない。

丁の側から離れるなんて耐えられない。

ずっと一緒に居ると約束したのだから・・・。

麒麟と鳳凰にも面倒を掛けてしまっているが、戻れない理由を話したところ、快く理解してくれた。

「・・・分かった。儂も鳳凰も丁の惨い死に様を目の当たりにしておるし、そなたとあの子が交わした約束も知っておる。何も言えまい
・・・。」

「ありがとう。理解してくれて、嬉しいよ。」

「・・・変わりがないようで安心した。天帝には儂から報告しておこう。」

麒麟は立ち上がり、帰り支度を始めた。

「うん、ごめんね。」

「気にするでない。・・・ではな。」

短い挨拶を済ませ、麒麟は天界へ戻って行った。

「・・・うわ。今回も多いなぁ〜」

机に積まれた書簡の多さに肩を落とす。

来月は鳳凰が来るから、ちゃんと終わらせないと面倒だ・・・。

そんなことを思いながら早速仕事に手をつけるのだった。
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