【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□死ぬこと
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見送りが終わり、はくたくさまと手を繋ぎ、家の中へ戻る。
ふと、小さな疑問が浮かぶ。
「はくたくさま・・・」
足を止めて、はくたくさまを仰ぎ見る。
「ん?」
はくたくさまも足を止め、私の前にしゃがみ込む。
「どうしたの?悲しくなっちゃった・・・?」
はくたくさまの両手が頬を包む込む。
「もちろん、悲しいです・・・。でも、一つ気になったことがありまして・・・」
「うん、言ってごらん?」
はくたくさまに促されるまま、口を開く。
「いつか、わたしが死んでも・・・今みたいにお見送りしてくれますか・・・?いってらっしゃい・・・って言ってくれますか・・・?」
「っ・・・」
はくたくさまの瞳が微かに揺れた。
神は、生と死の概念から外れた存在であることくらい知っている。
もし、このまま年老いるまで側に居てくれるとしたら・・・
はくたくさまの前から消えることになる。
「もちろんだよ・・・今みたいに頭を撫でて、たくさん抱き締めてあげる・・・。綺麗な花で飾って『いってらっしゃい』をしてあげるよ・・・。約束しよう・・・」
安堵した。
あの時、はくたくさまに出会わなかったら・・・
運が悪かったら、雨乞いの生贄として死を迎えていただろう。
誰にも見送られずに、絶望と苦しみと共に地獄に堕ちていただろう。
でも、この神様は『いってらっしゃい』をしてくれると約束してくれた。
「でも・・・」
「?」
はくたくさまが、わたしの肩口に顔を埋める。
「そんな、遥か先の事なんて・・・考えないで・・・お前が死ぬなんて・・・嫌だ・・・」
声が少し震えている。
「はくたくさま・・・」
「僕なら、お前を死から遠ざけられるかもしれない・・・」
彼の背に腕を回す。
瞬間、強く強く抱き締められる。
「丁・・・」
「・・・・・・」
さっきと、言っていたことが矛盾している気がする・・・。
『死』に対して抗ったり、否定したりすることは出来ないのでは・・・?
『僕なら、お前を死から遠ざけられるかもしれない・・・』
どういうことだろうか・・・?
当時のわたしは幼さ故に、はくたくさまの言葉を理解することは出来なかった。
この言葉の真髄を理解するのは、遥か先のこと。
終
続きます。