【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□丁の簪
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「はくたくさま・・・!これを・・・これをお受け取りください・・・!」

あれから少し歩き、たまたま見つけた甘味処に入った。

席に通されて早々、丁は僕に小判を押し付けてきた。

「気にしなくていいよ。僕が買ってあげたかったんだから。」

丁は、まだ納得できないと言いたげな顔でこちらを見ている。

僕は業と考えるふりをする。

「じゃあ、こうしよう。丁はこの1か月で見違えるほど成長したよね?この簪はそれに対するご褒美・・・ね?」

「・・・ご褒美、この前も頂きました・・・そんなに頂いていては・・・」

「丁が良い子だからだよ。」

僕は丁の頭をぽんぽんと撫でる。

「それに、お前が物を欲しがるなんて珍しいしね。ご褒美をあげた側としては、もっと喜んで欲しいな〜?」

やや意味深げに首を傾げれば、丁は頬を桃色に染めて、こちらを見た。

「はくたくさま・・・ありがとうございます・・・ずっと大事にします。」

丁は簪を大切そうに握り締めている。

「どういたしまして。さあ、挿してあげるよ。後ろを向いて?」

「は、はい・・・」

丁は後ろを向いて、髪紐を解いた。

艶やかな黒髪が肩に、背にさらりと流れた。

「うーん、丁の髪は柔らかいから、簪が挿さりにくいかも・・・ちょっと待って。」

懐から香油を取り出して、少しだけ指に乗せ、丁の髪を梳くように香油を馴染ませた。

淡い桃の香りが丁の髪から漂う。

「よし、これで纏めやすくなった。家に帰ったら新しい香油をあげるね。」

「はい・・・ありがとうございます。」

少し高めの位置で結い、簪を当てて髪を巻き込んでいく。

簪をくるりと一回転させて飾りが上に来るように挿す。

「うんうん、綺麗に出来た。見てごらん?」

丁に手鏡を渡す。

「わ・・・」

「ね?綺麗に纏まってるでしょ?」

横髪を整えながら、鏡越しに丁を見る。

「あ、ありがとうございます・・・」

ほんのり頬を染めてこちらを振り返る。

振り返ったときに、簪の飾りが繊細な音を立てて小さく揺れる。

「綺麗だよ。丁は簪がよく似合うね。」

「・・・毎日、使いますね。挿し方、教えてください・・・」

「もちろん、明日から練習しよう。」

僕の言葉に嬉しそうに頷く丁。

髪紐を使った纏め髪も可愛らしかったが、簪を使った髪型もいつもと違い、とても魅力的だ。

「お汁粉2つ、お待たせしました〜」

「ありがとうございます!」

満面の笑みを浮かべて匙を手に取る。

本当に愛らしい。

「はくたくさま、いただきましょう?」

僕の分の匙を差し出して首を傾げている。

「うん、そうだね。」

僕はその小さな手から匙を受け取った。

丁が笑ったり、首を傾げたりする度に、簪が可愛らしい音を立てて揺れる。

どうか、お前が大人になっても、その簪を使い続けておくれ。

その、赤くも橙に輝く、鬼灯のような簪を・・・







次作は白鬼で完結です。
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