【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□過去のわたしはもう居ない。
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家がある森を抜けて、しばらく南に歩くと街が見えてきた。

街が近づくにつれ、人々の明るい声が聞こえてくる。

「さあ、着いたよ。」

「わあ・・・!」

目の前にはたくさんの露店が出ていた。

「行こう。」

「はい!」

色々な店が出ていて、目移りしてしまう。

風車や硝子細工、簪など、どれも見入ってしまうものばかりだった。

射的や占いもやっていた。

「丁、目が輝いてるね。楽しいかい?」

「はい、とても!」

「良かった。僕も街に来るのは久し振りだから嬉しいな〜」

店を一軒一軒見ながら通りを進んでいると、背後から女性の声がした。

「あら、白澤様?」

振り向くと、そこには若い女性が立っていた。

「やあ、久しぶりだね〜」

「最近、お店にいらっしゃらないから心配してましたのよ?」

「仕事がなかなか片付かなくてね〜」

女性と楽しそうに話すはくたくさま。

どうやら、はくたくさまはこの人と知り合いのようだ。

「昨日、良い茶葉が入りましたの。よろしければ・・・あら?」

女性がわたしに気付いて首を傾げた。

「まあ!白澤様のお子かしら?」

腰を屈めて、わたしの顔を覗き込む。

「あ・・・あの・・・・・・」

「僕の子じゃないよ。ちょっとわけがあって、一緒に暮らしてるんだ。」

「そうなのね。でも坊や、白澤様によく似ているわね。目元とか・・・」

「そうかな〜?」

女性の顔がさらに近づく。

「っ・・・・・・」

「この絹糸みたいな黒髪も白澤様にそっくりだわ〜」

女性の手が頭に近づく。

「ッ!!」

咄嗟に女性の手を振り払い、はくたくさまの後ろに隠れる。

「あ・・・あら、ごめんね。怖がらせちゃったかしら?」

「あ・・・!あの、すみませ・・・」

必死で謝罪の言葉を口にするが、女性の顔が見られず、はくたくさまの足にしがみ付く。

何かを察したはくたくさまは、わたしを隠すように引き寄せた。

「・・・・・・ごめんね。この子、ちょっと人見知りでね。さあ、もう行こうか。」

はくたくさまは、わたしを抱き上げて、背中をさすってくれた。

「いえ、わたくしの方こそごめんなさい。またお店にいらしてね。」

「うん、近いうちに行くよ。」

「それでは失礼しますわ。」

挨拶を交わして、女性は去って行った。

「丁・・・?大丈夫かい?」

わたしを抱いたまま歩き出すはくたくさま。

「少し休もうか。疲れたよね。」
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