【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□過去のわたしはもう居ない。
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今日も良い天気。

洗濯物もよく乾きそう。

庭の花に水をやりながら、傍らに干されている洗濯物に目を向ける。

心地良い風がぱたぱたと洗濯物を揺らす。

その風がわたしの白い襦袢の裾もはためかす。

甘い花の香りが風に乗って鼻先に届く。

今日はとても気分が良い。

なぜなら・・・

「丁〜水遣りありがとう。そろそろ着替えて出掛けようか。」

背後からはくたくさまの声。

そう、今日は待ちに待ったお出掛けの日。

先週、薬を一人で作ったご褒美ということで、はくたくさまに街へ連れて行ってもらうのだ。

「はい、今まいります!」

桶と柄杓の片づけをしてから、はくたくさまの元に走った。

「髪も結い直した方がいいね。」

「あ、そうですね。」

気付かないうちに付いていた葉や花びらを払ってくれた。

居間に着いてから早速、出掛ける支度をする。

鏡の前に座って、髪を結い直す。

その間に、はくたくさまは何やら箪笥を開けて何かを探していた。

頭を軽く振って髪紐が緩まないか確認する。

「丁、こっちにおいで。着付けてあげるよ。」

わたしを手招きするはくたくさま。

呼ばれるまま走り寄ると、綺麗な着物を見せてくれた。

薄い橙色の絹で織られており、所々に桃色の蓮の模様がある。

「これ・・・どうされたのですか?」

「丁の為に仕立てたんだ。どうかな?お前には橙が似合うと思ってね。」

「でも、そんな高価なものいただけません・・・」

絹なんて、はくたくさまの漢服に使われているものしか見たことが無い。

「何言ってるの、いつも頑張ってお手伝いしてくれてるじゃない。これもご褒美だよ。」

「そんな・・・あっ・・・」

くるん、と後ろを向かされ、着物の袖を通される。

「それに、お出掛けのときくらい着飾らなきゃ〜」

器用に着物を着つけていくはくたくさま。

「はい、こっち向いて〜帯、苦しくない?」

「あ、はい・・・大丈夫です。」

赤色の帯が締められていく。

帯にも金の刺繍が繊細に入っていて、とても美しい。

「できた。鏡見てごらん?」

鏡の前に立ち、自分の姿を見る。

「うんうん、やっぱり丁は橙と赤がよく似合うね。」

はくたくさまは満足したように微笑む。

今まで生きてきて、こんな上等な服を着たことが無かったので、何とも言えない気持ちだ。

でも、はくたくさまが似合うと褒めてくれたので、自然に頬が緩む。

「これで支度は完璧だね。さ、行こう。」

「はい」

差し出されたはくたくさまの手をとって家を出た。
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