【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□あの子の癖
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ああ、なるほど。
だから夕餉をあまり食べなかったのか。
「いつから痛いの?」
「・・・昼餉の後くらいから・・・。」
なぜ、早く言わなかったのかという言葉が出かけたが、飲み込んだ。
この子は召使いの頃、我慢の連続だった。
他人に迷惑を掛けまいと、我慢して苦しんで育ってきた。
だから、今回も言い出せなかったのだろう。
夕餉だって、無理して食べていたに違いない。
「そう・・・苦しかったろう?今、診てあげるね。」
僕は丁のお腹に手を当てた。
若干の腹鳴りがある。
消化作用が弱まっているのだろう。
「丁、舌を出してごらん?」
素直に舌を出す丁。
その小さな下は微かに桃色に染まっていた。
「気持ち悪くない?」
「少し気持ち悪いです・・・。」
「そう・・・。ちょっとごめんね。」
僕は右腕の肘と手首の中心にある温溜という経穴に親指を宛がい、少し強めに押した。
「痛・・・!」
「ごめん、痛かったね。」
さっき押した部分をさすってやる。
原因が分かった。
身体の冷えからきた腹痛だ。
「身体が冷えちゃったんだね。大丈夫、すぐ治るよ。さあ、おいで。お薬あげるね。」
この部屋は寒いからね、と丁の手を引いてまた台所に向かった。