【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□ずっと側に・・・
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丁の意識の中は真っ暗で、何かが崩れていく大きな音がしていた。
自我が壊れようとしている証拠だ・・・
僕は全ての意識を集中させて小さいあの子を探した。
・・・・・・・・・。
居た・・・
丁は僕に背を向けて、前に向かって歩いていた。
いけない・・・!
そっちへ行ったら戻れなくなる・・・
『丁!起きなさい!!僕はここだ!戻って来い!!!』
僕は思い切り叫んだ。
丁の足が止まった。
「丁!丁!こっちに来なさい!!」
そして、僕が救いたくてたまらないその子は、ゆっくりと振り返った。
『はくたくさま・・・』
その小さな唇は、確かに僕の名前を紡いでいた。
そう・・・
こっちにおいで・・・
丁は僕に向かって手を伸ばした。
すかさずその手を掴み、彼を引き寄せた。
嗚呼・・・
良かった・・・
僕の胸に飛び込んできた丁を掻き抱いた。
誰もこの子を僕から奪えはしない・・・
「いい子・・・いい子だね・・・丁・・・」
彼は声も上げずに、ただただ涙を流していた。
「さあ、家へ帰ろう。」
僕は丁を抱き上げて、彼の意識から脱出するべく、目を閉じた。