【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□ずっと側に・・・
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今夜は丁のぬくもりを感じてぐっすり寝れると思っていた。
でも・・・
丁の様子がおかしい。
さっきまで穏やかに寝ていた子が、今は苦しそうに眉根を寄せ、小さく呻いている。
悪い夢でも見ているのだろうか?
額には玉のような汗が浮かんでいる。
身を起こして、彼の額に張り付く前髪を掃ってやる。
一度、起こしてやった方が良い。
「丁・・・?」
僕は丁の肩を軽く叩いた。
「・・・うぅ・・・」
丁は起きるどころか、更に固く目を瞑り、眉間の皺を深くした。
「ゃ・・・だ・・・ぃ・・・や・・・」
・・・・・・!!
酷く掠れた声が、拒絶の言葉を紡ぐ。
「丁・・・!丁!!起きて!」
今度は強く肩を揺する。
嫌な予感がする・・・
「たす・・・け・・・て・・・」
丁の身体は小刻みに震え、固く閉じられた目尻から涙が滲み出ていた。
やっぱり・・・
丁は夢に飲まれかけている・・・
夢とは恐ろしいものだ。
自身が何かに固執していたり、恐れているものがある場合、それらが夢となって襲ってくる。
非常に稀なことなのだが・・・
自身で振り払えれば問題ないのだが、それができなければ、夢に中に引きずり込まれ、自我を失い身を滅ぼしてしまう。
「まだ・・・死にたく・・な・・・ぃ・・・」
「丁・・・」
丁の腕が勝手に上がり、宙を掻く動作を見せる。
まるで、何かに縋るように・・・
このままではまずい・・・
「丁!行っては駄目だ!!!」
丁の睦言から推測するに、夢の内容は・・・
召使いとして働いていた頃のものだろう。
この子にとって、僕と出会う前までの日々が如何に辛く、恐ろしいものだったのかを改めて痛感する・・・
僕は丁を抱き起こして両肩を掴み、揺さぶった。
しかし、彼は目を覚まさない。
相当深くまで飲まれているようだ・・・
「ぃ・・・や・・・はく・・・た・・・く・・・さ・・・ま・・・」
丁は目を閉じたまま大粒の涙をぼろぼろ零している。
「!!」
僕に助けを求めて泣きじゃくる丁・・・
もう、見ていられない。
「ごめん・・・ちょっと、入るからね・・・」
僕は額の目を露わにし、丁をしっかり抱いて彼の額に自分の額を合わせた。
「大丈夫。今、行くからね。」