【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□甘えを知らない子
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あの場所からはるか北に離れた小屋へと帰って来た。

この僕が現世へ降りる際に用意したものだ。

人間が暮らしているそれと然程変わらない。

腕の中にいる丁はまだ啜り泣いている。

好きなだけ泣かせてやればいい。

今まで泣くことさえ赦されなかったのだろうから・・・。

僕は丁が落ち着くまで軽く揺すってやりながら部屋の中をゆっくりと歩き回った。

「――っく・・・ぅ・・・」

「よく耐えたね。強い子だ・・・」

丁の背をぽんぽんとやさしく叩いてやる。

「・・・・・・・・・」

やがて小さな寝息が聞こえてきた。

「よしよし・・・いい子だね。」

僕は部屋の隅に畳んであった布団を広げ、そこに丁を起こさないようにそっと寝かせた。

さて、とりあえず昼餉の支度でもしようかな。




簡単な汁物を作り終えて、丁が寝ている部屋へ戻った。

よく寝ている。

丁の枕元に座って彼の頬に手を添え、そのまま首筋、手へと滑らせた。

首が、手が細すぎる・・・。

こんなに痩せて・・・碌に休息も食事も与えられていなかったのだろう。

ふと丁の手首に隆起があることに気付いた。。

よく診ようと襦袢を捲ると、その細い手首が赤紫色に腫れあがっていた。

「!」

まさかと思い、反対の腕や足を見た。

やっぱり・・・。

体の至る所に手首と同じ内出血があった。

ここまで酷い内出血は堅いもので打たれない限りできないだろう。

「ちっ・・・」

僕は丁の余りにも酷い有様に舌打ちし、神気を溜めた右手を彼の手首に翳した。

「・・・もう大丈夫だからね。」

少し手に力を込めると、手首の赤みがみるみる引いていった。

どんなに小さな傷も残すことなくきれいに治していった。

「お前の面倒は全部僕が見てあげる。何も心配することはないよ。」
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