【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□おまえは賢い子だね
3ページ/3ページ

わたしはしばらく走って足を止めた。

「あった!」

そこには来るときに見つけたヨモギが茂っていた。

「これを揉んで貼って差し上げれば・・・」

ヨモギは傷薬になると書で読んだことがあった。

わたしはその場にしゃがみ込み、色の良いものを数枚選んでちぎって懐に入れた。

さあ、早く戻らなければ。




・・・丁は何処へ行ったのだろう。

道に迷っていたらどうしよう。

傷なんかよりも丁の行方の方が心配だ。

探しに行こう。

僕が腰を上げようとしたとき・・・

「はくたくさまー!!」

丁の声がした。

声のした方を見ると、丁がこちらへ走ってきた。

あんなに服を汚して、何をしていたのだろうか・・・

「丁・・・!良かった、心配したんだよ?」

僕は丁を抱き上げて膝の上に座らせた。

「ごめんなさい、はくたくさま・・・これを採りに行っていたのです・・・」

丁は少ししゅんとしながら懐からヨモギを出した。

「ヨモギ・・・?」

「はい・・・ヨモギは傷薬になるのでしょう?」

驚いたな・・・

ヨモギの効能を知っていたなんて。

「そうだよ、よく知ってるね。」

僕は感心して丁の頭を撫でた。

「ふふふ・・・お前は賢い子だね。」

「・・・前に、書で読みました・・・」

丁は頭を撫でられたことが恥ずかしかったのか、俯いてしまった。

そのままヨモギを両手でくしゃくしゃと揉み、平たく伸ばした。

「失礼します。」

そして僕の着物の裾を捲って傷を露わにさせた。

「・・・痛いですか?」

「うん、痛いよ。でも、丁が手当してくれているからすぐ治っちゃうよ」

本当はこれっぽちも痛くない。

でも、丁の優しさを無には出来なくて嘘を吐いた。

「・・・はやく良くなってください・・・」

丁は祈るようにそう言って、ヨモギを僕の傷に貼った。

「ありがとう。きっとすぐ良くなるよ。」

神気で治してしまわなくて本当に良かった。

「さあ、そろそろ帰ろうか。」

「はい!」

僕は丁の手を繋いで家へ向かって歩き出した。

「そういえば、ナツメは全部でいくつあったんだい?」

「22です!」

丁は手に持っているナツメが入っている籠を見てそう答えた。

「お〜たくさん採れたね」

僕は満足そうに笑う丁を見て目を細めた。

今日は良い一日だったな。




前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ