【短編】現代(鬼灯×白澤)

□いにしえのまほう
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こうして一人になると色々と考え込んでしまって、胸が苦しくなる。

鬼灯は当たり前の様に僕の側に居てくれているけど、本当にそれで良いのだろうか?

今も、あの時も僕はあの子に何もしてあげられなかった。

そんな僕の隣に居て、幸せなのだろうか?

酷い自己嫌悪に襲われる。

嗚呼、頭が重い・・・

この不快な苦しさから逃げるように目を閉じる。

何かが頬を伝う感触を感じながら、短い眠りに落ちた。































「・・・さん、」

「白澤さん!」

聞き慣れた低めの声に意識が覚醒する。

「・・・ほ、ずき・・・?」

黒衣を纏った長身の鬼、鬼灯が些か不機嫌そうな表情で立っていた。

「連絡しても返事が無いし、扉を叩いても音一つしないし・・・あまり心配させないでください。」

やや乱暴に髪を撫でられる。

「ごめん・・・」

まだ気怠い体を起こす。

「白澤さん・・・?貴方・・・」

冷たい手が頬に当てられる。

「何を泣いていたのです?こんなに目元を腫らして・・・」

鬼灯の指が這う箇所に微かな痛みを感じる。

いつの間に泣き腫らしたのだろう?

「・・・何でもないよ。」

涙の跡を消そうと頬に手を伸ばすが、それより先に鬼灯の手に制される。

「何・・・・・・」

「私には言えないことですか?」

「・・・・・・。」

「教えてください、白澤さん・・・」

切れ長な瞳が僕を見つめる。

「・・・お前さ、今幸せ?」

「は?」

呆気にとられたような鬼灯の声。

「鬼になって良かったと思ってる?」

答えを聞くのが恐いけど、意を決して訊ねてみた。

「幸せ、とは・・・?」

「そのままだよ。人として死んだ後に鬼として生まれ変わったことをどう思っているのかなって思ってさ。」

「何故、そんなことを聞くのです?」

「僕はさ、お前が死んだあの日・・・人の姿で蘇らせてあげたかった。
もう一度、お前に人としての生を謳歌して欲しかった。でも、出来なかった。」

「はくたくさ・・・」

「お願い、聞いて・・・」

鬼灯の唇を人差し指で制す。

「お前を救うには、天帝と鬼火に頼るしかなかったんだ。・・・・・・西洋にはね、死んだ者を姿かたちを変えずに蘇らせる魔法があるんだ。」

「?」

「心に魔を宿す者にしか操れない、恐ろしくて強大な力・・・欲しくて欲しくて仕方なかった。
でも、どんなに望んでもその魔法が手に入ることは万に一も無い。」

目の前の鬼灯の黒髪を梳く。

「・・・お前にはもう一度笑って欲しかった。もし、僕に力があったら・・・違う結果になっていたのかな・・・っ?!」

突然、強い力で引き寄せられて、そのまま広い胸に抱き込まれる。

「・・・・・・全く、馬鹿な人ですね。」

「ほおずき・・・」

「あの日、貴方に出会っていなかったら・・・鬼になっていなかったら、こうして抱き締めることは出来なかったでしょう?」

「・・・・・・。」

優しい手つきで頬を撫でられる。

「西洋の魔法だか何だか知りませんが、そんなもの貴方には必要ないでしょう?私は吉兆を纏う貴方が好きなのです。」

普段、鋭い眼孔を放つ瞳が柔らかに細められる。

「ぁ・・・」

「お願いですから、これ以上思いつめないでください。あの村で貴方に合った瞬間から、私には永久の幸せが約束されたのです。
死して尚、貴方の側に居られる。これ以上の幸せはありませんよ。」

もう一度、きつく抱き締められる。

そっか、

僕が勝手に塞ぎ込んでいただけだった。

いにしえのまほう

強い力を手に入れて、微笑むお前を見たいと思っていたけれど・・・

そんなもの、最初から欲する必要なんてなかった。

目の前の鬼は、それはそれは綺麗に微笑んでいる。

「全く、困った神様ですね。・・・そんなに不安なら・・・」

荒々しく、でも優しく口付けられる。

大きな手で髪を、頬を撫でられる。

目を伏せて、心地よい温かさに身を委ねる。

「嫌と言う程、刻んで差し上げます。私の印を、その身に・・・」

「教えてよ・・・もう、こんな思い・・・したくない・・・」

身体の力を抜いて、その逞しい腕に身を委ねた。



















鬼白の第一作目が続き物と言う中途半端感をお許しください(泣)
Kalafinaの『Magia』から連想しました。

Kalafina 『Magia』 From Yuki Kajiura

いつか君が瞳に灯す愛の光が
時を超えて
滅び急ぐ世界の夢を
確かに一つ壊すだろう

躊躇いを飲み干して
君が望むモノは何?
こんな欲深い憧れの行方に
儚い明日はあるの?

子供の頃夢に見てた
古の魔法のように
闇さえ砕く力で
微笑む君に合いたい
怯えるこの手の中には 
手折られた花の勇気
想いだけが頼る全て
光を呼び覚ます
願い

いつか君も誰かの為に
強い力を望むのだろう
愛が胸を捉えた夜に
未知の言葉が生まれて来る

迷わずに行けるなら
心が砕けてもいいわ
いつも目の前の哀しみに
立ち向かう為の
呪文が欲しい

君はまだ夢見る記憶
私は眠らない明日
二人が出会う奇跡を
勝ち取る為に進むわ
怯えるこの手の中には
手折られた花の刃
想いだけが生きる全て
心に振りかざす
願い

囚われた太陽の輝く
不思議の国の本が好きだった頃
願いはきっと叶うと
教えるお伽噺を
信じた

静かに咲き乱れていた
古の魔法優しく
世界を変える力が
その手にあると囁く
終わらない夢を見よう
君と行く時の中で
想いだけが生きる全て
命を作るのは
願い
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