【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□甘えを知らない子
1ページ/7ページ
僕は今日、みなしごを拾った。
現世の様子を見に行った際、妙に弱い人間の生気を感じたので、探してみたら茂みで蹲っている子どもを見つけた。
「坊や、こんなところでどうしたの?」
「・・・」
子どもは何も答えない。
生気がこんなにも弱って・・・具合でも悪いのだろうか?
あれこれ考えていると、子どもが口を開いた。
「だれ・・・ですか?」
「!!」
消え入りそうな声だ。
「わたしは・・・もう戻りません・・・戻ったら殺される・・・!まだ、死にたくない・・・っ・・・」
子どもは顔を上げずにそう言った。
今、何と言った・・・?
殺される・・・?
この子が住んでいる村はどうなっているのだ・・・
「大丈夫だよ。僕はお前を傷つけたりしないよ。」
恐がらせないように優しく声を掛けた。
「・・・・・・」
子どもは恐る恐る顔を上げて僕を見た。
その大きな瞳は涙で濡れていた。
「泣いていたのかい?」
「・・・・・・」
「何故、泣いていたのかな?」
僕はしゃがんで子供と目線を合わせた。
「・・・丁はみなしごだから、みんなから嫌われているのです。」
「うん・・・。」
子どもはぽつりぽつりと話し出した。
この子は自分のことを『丁』と言った。
『召使い』の意だ。
「最近は雨が降らないから畑の作物が育たないそうです。だから、明日の晩に雨乞いの儀式をするそうです・・・」
「・・・・・・うん。」
その先は容易に想像がついた。
「その儀式の生贄にわたしを使・・・っ?!」
僕は堪らなくなって、目の前で震えるその子を抱きしめた。