【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□ずっと側に・・・
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戌の刻・・・

丁に風呂へ行くように促した後、読みかけだった書を開き、書き物をしていた。

四半時ほどすると・・・。

「はくたくさま、お風呂ありがとうございました。」

丁が風呂から上がってきた。

「いいえ。ちゃんと温まったかい?部屋は寒くない?」

「はい、大丈夫です。」

僕は筆を置いて丁を見た。

前に仕立ててあげた橙色の襦袢を着ている。

うんうん、よく似合ってる。

ん・・・?

襦袢の襟が崩れてる。

あのままじゃ体が冷えてしまう・・・

「おや・・・丁、おいで。」

僕は丁を手招きして呼んだ。

「はい、はくたく様。」

丁は素直に僕の側に走り寄って来た。

僕は椅子から立ちあがって、丁の身長に合わせてしゃがみ、彼の襟合わせに手を掛け直してやった。

「襦袢の襟元が崩れてるよ。風邪を引いたら大変だ・・・よし、いいよ。」

「あ、あの・・・ありがとうございます。」

丁は小さく礼を言い、俯いてしまった。

人に世話を焼いてもらった経験が無いに等しい丁にとっては、こんな小さなことでも後ろめたい気持ちが生まれてしまうのだろう。

「どういたしまして。さあ、もう寝ようか。」

僕は丁の小さな身体を抱き上げた。

「はい・・・」

抱っこにはだいぶ慣れてくれたようだ。

丁は安心しきった様子で、瞼の重さと格闘している。

「ふふふ。目がとろんとしてる・・・。眠いんだね。もうすぐ寝室だからね〜」

僕は丁の背中を優しくさすってやった。
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