【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□死ぬこと
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「嘘です・・・っ・・・昨日は・・・元気でした・・・っ」
涙が溢れてきて、言葉が詰まる。
そんな私の背を、大きな手が優しく撫でる。
「認めたくない気持ちは分かるよ。丁はこの子と仲良しだったもんね・・・?」
はくたくさまの腕の中で大きく頷く。
でもね・・・、と彼は続ける。
「『死』は誰もが必ず経験すること。それが、自然の摂理。抗ったり、否定したりは出来ないんだ・・・こればかりは、神の僕にもどうしようも出来ない・・・」
「何も出来なくてごめんね・・・。辛いけど、この子の死を受け入れてあげよう?丁がそんなに泣いてると、この子も安心してお出掛けできないよ・・・?」
言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
腕の中のうさぎを、今度はそっと包み込むように抱き締める。
「天国に・・・お出掛け・・・」
無意識に言葉が零れる。
「うん、だから僕たちでいってらっしゃいをしてあげよう・・・この子が無事に天国に着けるようにお祈りしよう。」
「はい・・・綺麗なお花、たくさん摘みます・・・」
「うん、そうだね・・・」
はくたくさまはもう一度、私とこの子を抱き締めた。
いつの間にか、この子の死を受け入れていた。
悲しくて、辛いけど。
はくたくさまの言葉を聞いてから、死を認めないことは、旅立ちの邪魔をすることなのだと思った。
だから、わたしはこの子の為に前を向いていってらっしゃいをする。
この子が、天国でも楽しく暮らせるように・・・
綺麗な布を敷いた箱に小さな体を横たえ、周りに色とりどりの花を散らす。
ゆっくり箱の蓋が閉じられ、姿が見えなくなった。
特長的な模様を目に焼き付ける。
「・・・」
「丁・・・さあ・・・」
庭先に掘った穴の中に箱を入れ、丁寧に土をかけていく。
涙が出そうになるが、堪える。
最期は、笑顔で送り出したい。
土の上にも花を置き、小さな表札を立てる。
はくたくさまが出来上がったばかりの墓の前で手を合わせる。
わたしも彼に倣って手を合わせ、目を閉じる。
『いってらっしゃい』
『元気でね』
何度も胸の中で繰り返し祈った。
「偉いね・・・丁・・・」
はくたくさまが背中をさすってくれた。