【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□失敗と褒美
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ん、かなり辛い。
生姜と蒼朮がかなり出ちゃってるな・・・。
「真武湯だね。ちょっと辛いけど、よく出来てるよ。」
「やはり量も間違っていたのですね・・・はくたくさまはいつもどの生薬も一掴みだけ取っていたので、丁も真似したのです・・・。」
「え?ああ・・・僕の悪い癖なんだ。ごめん。」
「?」
もう何千年も薬師をやっているので、それぞれの薬で必要な生薬の量は手と指が覚え込んでいる。
一見、一掴みに見えても実際は微量ずつ違っている。
「本当はちゃんと量らなきゃいけないんだけど、ときどき横着しちゃうんだ・・・丁と薬を作るときはちゃんと量るようにするね。」
失敗の半分は僕の所為だ。
丁に悪いことしたな・・・。
僕はまた薬を一口啜る。
「はくたくさま・・・」
「なあに?」
「お加減はもう良いのですか?」
心配そうな表情の丁が僕の足元に駆け寄ってくる。
「うん。たくさん休んだし、何より丁が僕の為に作ってくれた薬を飲んだからね。」
丁を抱き上げて膝の上に乗せる。
「ありがとうね、丁。」
こつん、と額を合わせてやる。
「いえ・・・そんな・・・」
恥ずかしそうに俯いてしまった。
「ふふふっ・・・あ、そうだ丁に何かご褒美あげないとね。何が良い?」
「いけません、褒美を貰えるようなことはしていません・・・それどころか・・・」
丁は僕の胸に顔を埋めたまま首を振った。
失敗したことをかなり責めているようだ。
「いいんだよ。丁は今日2つも新しいことを覚えたんだよ?」
「・・・?」
丁がようやく顔を上げた。
「1つ目は、材料の分量が薬によって違うこと。2つ目は、薬を煎じているときは鍋から目を離さないこと。・・・ね?」
「あ・・・。」
「だから、一回り強くなった丁にご褒美をあげたいんだ。遠慮せずに欲しいものがあったら言いなさい。」
丁の頭をぽんぽん撫でてやる。
「では、あの・・・」
「うん、なになに?」
「お暇な時で構いませんから、街に連れて行っていただけませんか?」
「街?」
「はい、前の前に居た所がかなり栄えた街で、毎日、露店がたくさん出ていて楽しそうだったのです。
庭から遠目にしか見たことなかったので、いつか行ってみたいと思っていたのです。」
丁の声の調子が些か明るくなっている。
「そっか、いいよ。それじゃあ、近いうちに連れて行ってあげるね。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
膝の上で喜ぶ丁に目を細める。
楽しみが1つ増えた。
頑張って天帝からの依頼をこなさなきゃ。
この子の為に。
「さあ、丁。夕餉の支度をしよう。何が食べたい?」
続