【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)

□失敗と褒美
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あれ・・・・・・?

僕、寝て・・・?

ああ、そうか。

眩暈が酷くて、寝ていたんだ。

寝たらかなり体が軽くなった。

寝不足もあったんだろうな。

ああ、丁を一人にしちゃったな。

夕餉は丁の好物を作ってやろう。

その前に、もうだいぶ落ち着いたけど、一応薬を煎じて飲んでおこう。

ゆっくり身を起こして、伸びをする。

「丁は遊んでるかな〜?・・・ん?」

生薬の匂い・・・?

それもすごく濃い・・・

「・・・?」

僕は、部屋を出た。

廊下に出るとさらに強まる生薬の匂い。

それに混じって、幼子の泣き声も聞こえてきた。

「・・・!丁!」

泣き声のする台所へ急いだ。




「丁?!どうしたの・・・!!」

丁が机に突っ伏して泣いていた。

僕が来たことに気付いていないようだ。

ふと、丁の周りを見ると湯呑と鍋が。

先程からの匂いの原因はこれだ。

「丁、丁?」

嗚咽を零す丁の肩に優しく触れる。

「ッ・・・!あ・・・・・・」

弾かれた様に顔を上げ、僕を見た。

随分長い時間泣いていたのか、頬は涙で濡れそぼり、目元は赤くなってしまっている。

「はくたくさま・・・」

「うん。起きたよ、丁。寂しくて泣いていたのかな?」

敢えて、机の上の物については訊かない。

唇を噛んで俯く丁。

「はくたくさま・・・丁を叱って下さい・・・」

「どうして、僕が丁を叱らなきゃいけないの・・・?」

丁の向かい側に座って、その顔を覗き込む。

丁は、唇をますます強く噛んで、自分の周りにあった湯呑と鍋を僕の前に差し出した。

「・・・はくたくさまが眠っていらっしゃる間に、疲労に効く薬を作ろうと思ったのです・・・でも・・・」

「うん。」

「でも、作り方も知らないのに、どんどん進めて・・・あれこれ考えていたら、こんなのに・・・」

「うん。」

「はくたくさまの真似をすれば、丁にも作れると思ったのです・・・。でも、出来ませんでした・・・。」

「丁・・・」

「生薬を無駄にしてしまって・・・ごめんなさい・・・丁は、丁は・・・」

また泣きそうになり、その大きな瞳に涙を湛えている。

「丁・・・唇を噛んではいけないよ。痛いだろう?」

丁の桃色に染まる唇に指を当てる。

「はくたくさま・・・」

「丁を叱る理由が分からないな。これは僕の為に作ってくれた薬でしょう?」

「あの・・・・・・はぃ・・・」

消え入りそうな返事だ。

「でも、失敗してしまいました・・・」

「大丈夫だよ、少し煮出しすぎただけ。」

それに、と続ける。

「誰でも失敗するさ。失敗しても次から気を付ければ大丈夫だよ。」

「・・・。」

「丁は、まだ教えていないことを一人でやったんだよ?偉かったね。間違えた所は、今度一緒に復習しよう。」

「・・・はい・・・・・・。」

「ほら、もう泣くのはお止め。ね?」

丁の目尻に溜まった涙を指先で拭ってやる。

素直に頷く丁。

僕は、薬が入った湯呑に手を伸ばす。

「ぁ・・・」

丁が声を上げるが、構わず湯呑に口をつける。
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