【短編】神代・黄泉(白×丁・白×子鬼灯)
□あの子の癖
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「ごめんなさい・・・はくたくさま・・・」
丁は台所に着くなり、泣きそうな表情で謝ってきた。
「ん?何も怒ってないよ?ただ・・・」
僕は丁の目線に合わせて腰を屈めた。
「どこか痛かったり、不安なことがあったらすぐに言って欲しいな。辛い思いをするのは丁なんだよ?僕は丁が苦しんでる姿は見たくないな。」
「はい・・・ごめんなさい・・・」
彼は着物の裾を握って下を向いている。
「謝らないでいいよ。さ、お薬を作ってあげるね。お腹痛いの少し我慢できる?」
丁は頷いた。
「ごめんね。すぐ作るから、いい子で待っててね。」
丁を抱き上げて椅子に座らせた。
それから僕は生姜湯を作るために材料を出した。
生姜と大根をすり潰し、砂糖と水を加えて煮詰める。
そこに茯苓をほんの少し入れる。
丁はまだ幼いため、生薬はほんの少量しか与えられない。
例え、上薬しか用いていないとしても、副作用が大きく出てしまう可能性がある。
生姜湯を冷ましている間にさっき剥いた仙桃で蜜煮も作ろう。
今は消化の良いものを食べさせなくては。
ふと丁を見やるとまた指先が動いていた。
どうやらあれは体調が優れない際に無意識で出る癖らしい。
少しでも気を紛らわせようとしているのだろう。
だが、今度は痛む胃のあたりをしきりにさすり出した。
余程痛いのだろう。
可哀相に・・・
僕の力で治してしまうことも可能なのだが、今は丁に寄り添って彼を心の底から安心させてあげたい。
仙桃が煮立っている鍋を見ながらそんなことを考えた。