光の場所

□独眼竜の過去
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主人公side

コンピュータ室でさっき起きた事を考えていた。

ついさっき、コンピュータ室の机に寝ているフリをしていたオレにブン太がキスをした。

声をあげまいと寝ているフリを続けた。

ブン太が部屋を出たのを確認してオレは顔をあげた。

そして今の状況だ。

ずっと手の甲で口を隠している。

多分、未だに顔は真っ赤だろう。

こんな顔、絶対に見せられない。

ていうか、なぜブン太はあんな事をしたんだ?

この合宿に参加している奴等は皆オレが女だってことを知ってる。はず。

ブン太も………

まさか……アイツ……

オレの事を……

…………なんてな。

そんなわけない。オレとブン太は友達ってだけだ。

…友達なんだ。

オレは首に下げているチェーンを取り出す。

赤のテニスラケットと黄色のテニスボールのキーホルダー。

10年前、ブン太がオレにくれた物。

オレの大切な宝物。

友達の証のお揃いのキーホルダー。

ただの友達なんだ。それ以上はない。

?「お?起きてた?」

コンピュータ室の入口から聞きなれた声がした。

その声は誰か、オレは知っている。

慌ててオレはチェーンを後ろに隠した。

剣「…ブン太か」

丸「?今何か隠した?」

剣「何も」

丸「そっか。なぁ、よく寝れた?」

剣「あぁ、疲れもだいぶ取れた」

丸「あんま無茶すんじゃねぇぞ?」

剣「あぁ…皆はまだ帰ってこないのか?」

丸「さっき連絡来たけど、もうすぐこっちにつくみたい」

オレは「そうか」と言うと椅子に座った。

さっきの事を考えるとブン太と目を合わせられない。

聞きたい…けど寝ているフリをしてたなんて言えない。

丸「………なんてな」

剣「?」

丸「優、やっぱ隠しものしてんじゃん」

剣「!?」

ブン太にチェーンを持っている右手を掴まれた。

ブン太はチェーンを確認するとしばらく黙り込んだ。

どうしよう……バレてた……

ここをどう言えば……

そう考えていると不意にブン太がオレを抱き寄せた。

自分の鼻が、口がブン太の肩に当たる。

オレとブン太の身長の差はこんなにあったっけ?

10年前と変わってしまった事がたくさんあった。

…なんて考えている暇もなかった。

丸「………やっと…会えた…っ」

剣「!!!!」

丸「っ…ごめん、優。本当は…俺お前が10年前のあの子だってこと…薄々だけど…気づいてた」

今、なんて言った?

ブン太はオレの事を気づいてた?

丸「でも…お前に…辛い事いっぱい起きてたのに…なかなか言えなくて…ずっと…逃げてたっ」

剣「っ…」

1つ1つの言葉を言う度にオレを抱きしめる力が強くなる。

苦しい、とも思った。でも震えていた。そんなブン太の腕を振り払えなかった。

丸「今お前が…このキーホルダー大事に持っててくれてたこと知って…やっと勇気が出たっ…やっと…」

剣「………っ…ずっと…待っててくれてたんだな……」

丸「あったり前だろぃ!!!!」

剣「あ、り…がとっ」

丸「!!!!」

剣「ずっとずっと…オレの事を…信じて待っててくれて…ありがとっ」

丸「俺も…っ、キーホルダー…大事に持っててくれて…俺の事、忘れないでくれて…っありがとっ…」

ブン太はずっと黙ってたオレの事を責めるどころか、笑いかけてくれた。

逃げないで、オレと向き合ってくれた。

オレも…………

剣「…ブン太…」

丸「ん?」

剣「…あとで…皆に…話そうと思う。オレの…過去の話を。この10年間…何があったかを」

丸「!!」

剣「皆…軽蔑するかもしれない。けどお前が逃げなかったようにオレも逃げない………。お前にも聞いてほしい」

丸「…っ軽蔑なんてしねぇよ!ちゃんと聞く!!お前の全てを受け入れる!!だから…だから優…もう少しだけ、このままでいさせてくれっ…」

オレを離さないブン太

その力強さはオレを安心させるほどの強さだった。

そんなブン太に甘えたくなって、ブン太の肩に顔を埋めた。

ブン太の右肩がオレの涙で濡れていくのは自分でも分かった。

ブン太は逃げなかった。

オレもブン太のように頑張ろうと思う

絶対に逃げない

過去から、自分から。

だから…ブン太…

オレは前に進む。

それが未来へ繋がるなら、オレは歩き続けるよ。
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