桜咲く頃月照らす
□向かうのは
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黄「!」
突然、総司に抱き着かれた俺は戸惑いを隠せなかった。
黄「離せ、よ…」
沖「…ねぇ」
黄「…っ」
耳元で呟かけると、反抗せざるを得ない。
沖「…千鶴ちゃんを守りたいって思うのは君の勝手だよ」
総司は「でも」と言うと俺の頭を撫でる。
沖「…君が誰かを守りたいように、誰かだって君を守りたいんだ。…その誰かとは言わないけど」
黄「…」
暖かくて、優しくて。
どうしてもこいつの言葉を聞き入れちまいそうで。
沖「…近藤さん達は九条河原に向かったって」
黄「え?」
沖「…今の君なら大丈夫そうだからね。震えも止まっているし」
そう言うと総司は俺から離れた。
黄「…言っている意味、分かってんの?」
沖「分かってるけど、僕のせいにはしないでよね。僕が教えましたって言うと山南さん怖いから。土方さんも面倒だし」
黄「…でも」
沖「怒られるのは僕じゃなくて君だし、別にいいよ。…早く行きなよ」
黄「…ありがと」
沖「…………悠里」
黄「…?」
俺は部屋から出ようとしたらそこで呼び止められた。
沖「…斬られないでよね。君を斬っていいのは、僕だから」
黄「…あぁ」
そして俺は今度こそ部屋から、そして屯所から出て行った。
黄「九条河原……。行き先がかなり変わってる。…千鶴」
夜の京の都を俺はただ、走り抜けた。
−−−−−−−−−−−−
沖「…」
黄桜を見届けた沖田は自室でずっと月を見上げていた。
沖「…なんで、あんなことしたんだろうな」
苦笑する沖田。
そして、障子が開く音。
沖「…あぁ、まだ起きていたんですか?山南さんに平助」
山「…まったく、君って人は…。彼女がまた暗い顔で帰ってきたらどうなさるおつもりなんですか」
藤「総司も何だかんだ、悠里が心配なんだなぁ。…まぁ、あいつなら大丈夫だろ」
沖「…僕は、悠里がそうしたいと願うのなら行ってもいいって思っただけ。…千鶴ちゃんを守るために、悠里は生きて帰ってくる。…そう思うよ」
そしてまた月を見上げる沖田。
沖「…みんなも今頃、この月を見てるのかな」
近藤さんも土方さんも源さんも千鶴ちゃんも…そして
悠里も
沖「…無事じゃなかったら、説教かな」