3Pのお部屋
□お月見一杯!(銀土月、銀月土)雨さんリク作品
2ページ/18ページ
長谷川は、じっと札を見やる銀時に話しかける。
「やった、銀さん、これ結構稼いだんじゃない?今日は一日遊べるぜ!」
銀時は不敵に笑って言う。
「そーだな…ピンサロでもソープでも行けるぜ長谷川さん。今日は俺の驕り」
長谷川はそれを聞くといや、と慌てて手を振る。
「いやっ、俺は…ハツっていう奴がいるから…そーいうのはちょっと」
「何だよ。かてェ事言うなよ長谷川さん。どうせ溜まってんだろーがやせ我慢しやがって」
「銀さんと一緒にしないでよ、俺は…そういうのはあんまり好きじゃないんだよ」
何だよ、と銀時はつまらなそうに言う。
自分は女でも侍らせて、豪遊したいのだ。
乗り気でない長谷川に舌打ちを一つくれてやった。
最近、土方とは遊んでない。
向こうが忙しいので、銀時も意地っ張りなところもあり連絡を取っていない。
こうなってくると、もう根負け勝負のようになって意地でも連絡するもんか、と言う気分になってくる。
銀時は焦れる気持ちを隠すように、長谷川に言い放った。
「いーよ。長谷川さんがその気無いなら。俺、いーとこ行ってくるから」
片手で持った月見の札を重ねて、銀時は一人の女を想う。
それは、土方のことを考えるときのような焦がれる気持ちではなく、見もしない母親に会う時のような、妙に暖かい気持ちになるのだった。
ぽっかりと空に浮かぶ月は、ぼんやりと黒い雲に囲まれ、何とも言えない、色っぽい風情を醸し出している。
それに照らされた吉原は、更になまめかしく、男たちの心をくすぐる。
月詠は、百華の長としてのパトロールに向かうため、屋根の上を歩いていた。不審な奴はいないかと目を光らす。
まあ、そうはいってもこの前の騒動で鳳仙は消え、吉原は安全になったと言える。でもまあ、女が男を、男が女を惑わすこの街は危険であることには変わりないのだった。
ふう、とキセルに火を付け、煙を吐くと、自分の周辺に煙が浮いては消えていく。
その煙の儚さを、月詠は自分のことのようだ、と思う。
この前、自分のミスとは言えども好きな男の情事を覗き見し、更には薬を盛られ、自分自身も乱れて結局は体を許してしまったのだ。
そう、坂田銀時、と言う男に。
結局は自分はあの時だけで、銀時にとっては遊びの一回の情事に過ぎなかったのだ、と思う。
銀時には男の恋人がいたんだし、自分が入る隙など無かったのだ、と何度も自分に言い聞かせた。
でも。
銀髪と結ばれたあの日のことが、月詠は忘れられない。
そしてそんな自分を責めていた。
早く忘れたい、でも忘れたくない自分も確実に存在する。
激しい絶頂の中で、確実に銀時から感じたのは、愛情しかなかった。
それが、月詠を惑わせていた。
深くなっていく闇の中で、照らす月のそばには銀色の星が、鈍く光っていた。