3Pのお部屋

□月が覗いている(銀×土←傍観者月詠、銀×月)
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(なっ…誰と…泊まるんじゃ?銀時…ぬし…)

「お…お安い御用じゃ、そのくらい」

「まじでー?助かるぜ。どーも部屋の都合がつかなくてさァ…」

銀時は途端に笑顔になった。
月詠の心に、チクリ、と痛みが刺した。
誰と…?誰と来るのか…

「ちっと…媚薬使うからさ、汚しちまうかもしんねーけど…金なら後で払うから。宜しくな」

銀時は言うと、自身の唇に人差し指を当てた。

「…あと…これも悪ィけど…他言無用で頼むぜ」

「わっ…わかりんした…」

月詠は、はは、と作り笑いをした。そして銀時を清太の部屋に案内した。その間も、月詠の頭からは銀時の部屋に誰が来るのか、そのことが離れない。
花屋の主人に一つ部屋を借りるお願いをしに行っても、そのことは月詠の頭から離れることは無かった。

(もしかしたら…銀時もわっちの事…なんて、思ってたのが馬鹿みたいじゃ)

月詠は自身の部屋に籠り、涙を落とした。
辛かった。
想いを寄せる男が、今夜媚薬を使ってどこかの女と繋がろうというのだ。

「銀時の女…誰なんじゃろ」

(まさか…メガネの姉の妙…いや…)

月詠は涙を拭くと、誰なのか思案し始める。

(それとも妙の友…九兵衛…?いや、あの女子は男子を好まない)

(まさかまさか…猿飛!?…いや、それはないじゃろ)

キセルに火を付け、ゆっくりと煙を吐き出す。その紫煙を見つめて、自分がどれだけ滑稽なのか思い知りはあ、とため息を漏らす。

「わっちが知らない女子かもしれないな…」

その可能性も否定できない。
なんせ、今まで銀時には浮いた話など聞いたこともない。周りには女がたくさんいるのに、銀時自身が好きだと言っているのはアナウンサーしかいなかった。
月詠は何となくだが、銀時が真剣に女と付き合うのは面倒くさいと思っているような気がしていた。
でも付き合っている女がいるなら自分は応援したい、銀時の幸せを願ってあげたい、切実にそう願った。

「師匠以外で…好きになった男はアイツが初めてじゃな…」

ふと、銀時の流れてきた視線を思い出して月詠は笑う。あの男が自分の物にならなくても大事な人物であることに変わりはない、そう自分に言い聞かせて月詠は銀時と清太の元に戻った。
月詠は自分を殺すことにたけている。
自分自身の気持ちを殺すことなんて、彼女にとっては造作もない事だった。
自分は大丈夫。ただ、そう言い聞かせて。
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