銀土(原作設定)

□夏の日、残像
2ページ/6ページ

殴られた頭を擦りながら、銀時は皆に言い放つ。

「あー、俺、ビール買ってくっから。オメーらはまあ、何かその辺にいろや」

「分かりました、多分神楽ちゃんは櫓に乗りたいだろうから、僕は姉上と写真撮ってますね」

新八がそう言うのをいいことに、銀時は身を翻してビール売り場に向かった。

カラン、コロン、と下駄の音がする。
久しぶりに下駄を履いた。昔は下駄しか履いていなかったのに。そう、松陽と過ごしたあの時は…

久しぶりに昔を思い出す。それと同時に、夏祭りで松陽とはぐれた記憶が蘇ってきた。あの時はこっぴどく怒られたっけ。

ビール売り場で、生ビールを買おうと並んでいると、前から銀サン、と声がかかる。


「銀サン、来たんだ?しょうがないから一杯奢ってやるよ〜」

生ビールを注いでいるのは長谷川だった。

「長谷川さんじゃん…ナニ、バイトしてんの」

「そうそう、ほら、お登勢さんがさ、良かったらバイトしないかって。ここ、スナックお登勢の名義で出してるんだって〜」

後ろにはかすかにキャサリンの耳が見え隠れしていた。
見つかると面倒くさいような気がして、銀時はビールを受け取ると早々に離れようとする。

「そーなんだ…サンキュー長谷川さん。じゃあ、な」

長谷川は鉢巻きが板についていて、それを見ているとあの男が真選組の更に上のエリートだったことも忘れてしまいそうだ。でも生き生きと働く長谷川は、これで良かったのかもしれない。

ビールを片手に、銀時はお面売り場を横切る。
そこには狐のお面があって、昔の事が思い出された。
そう、松陽に買ってもらったことがある。
まだ桂や高杉が門下に入る前の話だ。

初めてお面が自分のモノになったのが嬉しくて、その日は眠れなかったっけ。
銀時は懐かしくて、ふとそのお面に手をやった。

「はい、兄さん、毎度あり」

的屋の兄ちゃんがそう言って面を差し出してくる。仕方なく銀時は金を払う。五百円もするとは、全く高くなったもんだ、と思いながら。

ビールを一口、お面は斜めにかぶり、銀時はふらふらと入り口の方へ出て行く。人ごみが多くて、なんだかくらくらする。それとも、久しぶりに松陽の事を思い出したからか…

遠くの櫓を見てみると、どうやら神楽が妙と一緒に踊っているらしい。銀時はほっこりと心が温まっていくのを感じていた。

それでも、何故か心の中はすっぽりと穴が開いたようになる。
その穴を埋めるように、銀時は土方の事を想い出していた。土方のことを考えると、何故か心が焦れる。
この感情が一体何かは分からない。でも隙間が無くなって、満たされるかのように修復していくのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ