銀土(原作設定)
□チョコレート・ジェラシー
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沖田に凄み、それから一言も話さなくなってしまった土方は、沖田の言ったことを考えていた。
(確かに、アイツの周りには女ばかり、だな…)
ふーっと息を吐いて、車から窓越しに外を見つめる土方のその瞳は、いつものように冷たく光っていた。
沖田は運転しながら、土方の言葉がないことに内心ほくそ笑む。この沖田という男、可愛い顔をしているが本当に心がSの塊である。
土方の心を知り尽くしている彼だからこそ、銀髪の事を言って、土方の心を乱せるのだった。
沖田は銀髪の事は嫌いではない。
むしろ、慕っている、いや、興味があると言った方がいいかもしれない。底知れぬ強さと曖昧さ、そして自分たちの様に何かに縛られないというふわふわした生き方。
自分は近藤に死ぬまでついて行くつもりだが、もしそんなことがなければ銀髪について行ったかもしれない、沖田はふとそんなことを思う。
そんな男が、土方と付き合っているようなのだった。
男同士で何を、と最初は思っていたが、どうやら本気らしいから放っておけなくなってしまった。
因みに、沖田という男も土方が気になっている。
この気持ちが何なのかは分からない。
でも、土方を見ると心がざわつき、イライラする。これは、一体なんという感情なのか、沖田自身は知る由もなかった。
「…あ」
ふと沖田が車を止める。
土方が窓の外を見ると、そこにはチャイナ服の女の子が眼鏡をかけた男の子と歩いている。
手には、紙袋を持っていた。
沖田は窓を開けて声を掛けた。
「おーい。チャイナ―。今日何の日か知ってるかー」
沖田の声に気付き、チャイナ服の女の子は傘の向きをくるりと変えてこちらを向く。
「うぜー。何言ってるアルかコイツ。こないだ少し遊んであげたらもう彼氏気取りアルか」
沖田に向かって睨みを利かすこの女子は、神楽。銀髪の経営する万事屋でスタッフとして働いている。
夜兎、という天人で、怪力の持ち主。沖田はこの女の子が大層気に入っているように、土方には見えた。
「はは。俺と口きいた時点でお前の負けでさァ。早くその袋のチョコよこせ。食ってやるから」
途端に神楽は怒鳴り散らしながら沖田に向かってガンを飛ばしてくる。
「だーれーがーお前になんてやるアルか。これは銀ちゃんにやるアル。誰にもやらないアル」
べー、と舌を思いっきり出して凄む神楽に、沖田は噛みつこうとするが土方がそれを制した。
「総悟、止めとけ。女相手にむきになるな」