銀土(原作設定)
□まじわる。
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銀時は、頭を掻きながら、新八の声を聴かないふりをした。沈みきった心を、なかなか簡単には浮上できなかった。
それもこれも、土方に会えないせいだ。
二週間前に土方からかかってきた電話。
そのせいで、こんなにも全てが灰色になるとは、銀時自身、想像もしていなかった。
自室の布団の上で、銀時はごろり、横になる。
「…全く…こんなにお前がいないだけで…」
銀時は呟き、黒髪と煙草の匂いを反芻した。
艶やかな黒髪。
ぎろりと睨む鋭い眼光。
薄い唇から、漏れる、声。
全てを手に入れたはずなのに、今は触れることができない。
「あ〜あ…遠距離恋愛ってこんな感じなのかな」
ぽつんと呟き、ふう、とため息をついた。
二週間前のあの日。
土方は、珍しく電話をかけてきた。
『万事屋…か?』
『土方…どうしたんだ』
『その…実は、だな』
『?』
『今、潜入捜査中で』
『潜入捜査?大変だな、警察さんはよ』
『…しばらく、戻れそうにねえ』
『?どういうことだ?』
『…詳しくは言えねえが…その、あんまり心配すんなってこと』
『…???』
『…特に意味はねえ。じゃあな』
ツー、ツー、と乾いた音。
それ以来、全く電話は来なかった。
こちらからかけても、電波が届かない、という女の声が繰り返されるだけだった。
屯所に行っても、外出中、としか言われない。
怪しい感じはしていたが、どうすることもできなかった。
「土方…お前に会いてぇ…」
太い腕で自身の顔を覆い隠すと、銀時は土方を想い目を閉じた。
追い打ちをかけるように、雨脚がひどくなり、銀時の耳を煩わした。