その他CP
□Kiss & Cry
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「お前トシ具合悪いって言ってたアルな、ワタシトシに見舞い行きたいアル」
「はァ?何言ってんの神楽ちゃん…別に俺達が行かなくたって―」
「歓迎しますぜ旦那。でもチャイナ、オメーだけは許さねーぜィ」
沖田の顔は臨戦態勢である。
それに神楽が答える。
「上等アル…」
「よくも俺の事子犬扱いしやがったなァ、お前を屯所には入れねェ…俺に勝ってからにしろィ」
「マヨ買ってトシに会いに行くアル!チワワ、覚悟アル!」
「ちょっと…神楽?オイ、沖田君―」
二人はお互いに攻撃し合いながら、かぶき町の路地を疾風の如く駆け抜けていく。
それを見ながら銀時はため息を吐いた。
「きゃうん」
定春が鳴くので、銀時はもふもふと豊富な定春の毛を撫でながら声を掛けた。
「…土方」
呟くと、銀時は万事屋の方向とは逆に歩き出していた。
そらは青く、江戸の町は喧嘩日和、散歩日和だ。そう思いながら。
屯所に付くと、見たことがない隊士が出迎えた。銀時を見るなり中へ、と案内してくる。真選組とここまで関わってしまって、後戻りできなくなっている自分に少し嫌気が差す。あそこまで頭を突っ込もうとなんて、思ってもいなかったのに。
定春を屯所の先に繋いで銀時は頭を撫でた。
「クウン…」
「悪ィ、ちょっと行ってくっから、な」
屯所中は閑散としていて、いつもこんな感じだったのか、と銀時は思い出せないでいた。
やっぱり沖田の言った通り、土方が休んでいることで他の隊士の負担が増えているのだろうか。それとも、この前の伊東鴨太郎の乱で、此処まで隊士達にダメージが来ているのか。そのどちらなのかは銀時にも分からなかった。
屯所の中庭を抜けると、そこには近藤がいた。
「万事屋、来てくれたのか」
近藤は少し、困ったような嬉しいような複雑な顔をしていた。
「トシのことだ、きっと無茶したんだと思うんだがな」
近藤はそう言うと、銀時を副長室に案内した。
襖を開けると、まず机に多量の書類。それから、その奥の真ん中に布団が敷いてあり、そこには土方が臥せっていた。
「トシ、万事屋が来たぞ」
近藤はそう言うと、枕元に座る。
銀時はまるで悪い夢でも見ているような心持でその姿を見ていた。
「ん…」
ゆっくりと目を開ける。
そのうっすらと青い瞳。
開くと、銀時を一瞥した。
それからこう言った。
「―何しに、来た」