パラレル

□その舌をください
1ページ/20ページ

期末テスト、というのは名ばかりで、進路の為の勉強に勤しむ三年の学生たち。

冬も徐々に本番になっていく最中、テスト最終日という解放感が生徒達を包んでいた。しかし、進路の為の勉学はまだ始まったばかりでもあるのだった。
カバンを手にして、近藤は自分の机から土方の机に向かって話し出した。

「おーい、トシ、テストも終わったしさァ、たまには帰り遊んでいかないか」

近藤は声がでかい。
土方は少し恥ずかしくなりながらも答えようと身を乗り出した。
土方の隣の席、それを聴いた沖田がしゃしゃり出る。

「いいですねェ近藤さん、何処行きますか?カラオケ?ラウンドワン?それとも」

土方は横入りしてきた沖田に明らかに不快な顔をしている。

「おい総悟、近藤さんは俺に…」

「いいんでさァ、アンタどうせ近藤さんが行く、っつったら行くんだろィ。自分がねェのも同然なくせに」

痛い所をつかれ、土方は奥歯を噛みしめた。
確かに自分は今までこの男に逆らったことがあるのだろうか。

「近藤さん、あの…」

「行くだろ、トシ」

にかっとおひさまのように笑われると、土方はそれ以上何も言えなくなる。そうだ、自分はこの人のこんなところが好きなのだ。自分にはない、この人にしかない圧倒的な明るさ。きっと沖田も、この人だからこそこんなに懐いているのだろう。

「うん…そーだな」

「やっぱり」

沖田はにやりと笑って土方に言う。
完全に心を読まれているようだった。

ふう、と一息ついて土方はこの二人には敵わない、と思い直す。自分のカバンに筆記用具を詰め込むと、埃っぽい教室の出口に向かって歩き出した。

「行こうぜ、腹減った」






沖田がどうやら細工していたのか、それとも近藤がそうしたのかは分からないが、目的地に着くとそこにはクラスの女子がいた。土方は失敗した、と思い直す。ボーリング場に来たのだがどうやら三対三、これはもう言い訳がつかない。

そこには志村妙がいた。ボーリング場の、ピンがガタゴトと運ばれていく音が煩い。

「近藤さん、じゃあ男女三人で丁度いいですね」

いつものようににっこりと笑って、妙が言う。

「そうですねお妙さん。いつも素敵です」

近藤の愛情の深さは果てしない。あのゴリラのような狂暴な女を好きだというのだ。それはそれは、相当な愛情が無いと無理というものだろう。しかも、自分の強さも自覚していないとあんな強い女とは付き合えない。土方はぼんやりとそう思う。

対する沖田と言うと、この男は腹が読めない。一体何を考えているのか、はたまた何も考えていないのか。恋愛に関しては沖田の事は全く知らなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ