パラレル
□その舌をください
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期末テスト、というのは名ばかりで、進路の為の勉強に勤しむ三年の学生たち。
冬も徐々に本番になっていく最中、テスト最終日という解放感が生徒達を包んでいた。しかし、進路の為の勉学はまだ始まったばかりでもあるのだった。
カバンを手にして、近藤は自分の机から土方の机に向かって話し出した。
「おーい、トシ、テストも終わったしさァ、たまには帰り遊んでいかないか」
近藤は声がでかい。
土方は少し恥ずかしくなりながらも答えようと身を乗り出した。
土方の隣の席、それを聴いた沖田がしゃしゃり出る。
「いいですねェ近藤さん、何処行きますか?カラオケ?ラウンドワン?それとも」
土方は横入りしてきた沖田に明らかに不快な顔をしている。
「おい総悟、近藤さんは俺に…」
「いいんでさァ、アンタどうせ近藤さんが行く、っつったら行くんだろィ。自分がねェのも同然なくせに」
痛い所をつかれ、土方は奥歯を噛みしめた。
確かに自分は今までこの男に逆らったことがあるのだろうか。
「近藤さん、あの…」
「行くだろ、トシ」
にかっとおひさまのように笑われると、土方はそれ以上何も言えなくなる。そうだ、自分はこの人のこんなところが好きなのだ。自分にはない、この人にしかない圧倒的な明るさ。きっと沖田も、この人だからこそこんなに懐いているのだろう。
「うん…そーだな」
「やっぱり」
沖田はにやりと笑って土方に言う。
完全に心を読まれているようだった。
ふう、と一息ついて土方はこの二人には敵わない、と思い直す。自分のカバンに筆記用具を詰め込むと、埃っぽい教室の出口に向かって歩き出した。
「行こうぜ、腹減った」
沖田がどうやら細工していたのか、それとも近藤がそうしたのかは分からないが、目的地に着くとそこにはクラスの女子がいた。土方は失敗した、と思い直す。ボーリング場に来たのだがどうやら三対三、これはもう言い訳がつかない。
そこには志村妙がいた。ボーリング場の、ピンがガタゴトと運ばれていく音が煩い。
「近藤さん、じゃあ男女三人で丁度いいですね」
いつものようににっこりと笑って、妙が言う。
「そうですねお妙さん。いつも素敵です」
近藤の愛情の深さは果てしない。あのゴリラのような狂暴な女を好きだというのだ。それはそれは、相当な愛情が無いと無理というものだろう。しかも、自分の強さも自覚していないとあんな強い女とは付き合えない。土方はぼんやりとそう思う。
対する沖田と言うと、この男は腹が読めない。一体何を考えているのか、はたまた何も考えていないのか。恋愛に関しては沖田の事は全く知らなかった。