銀土(原作設定)

□彼方からの手紙
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日中の暑さも嘘のように涼しくなる。更には興梠の声が、かぶき町の端端から聴こえてくる。
坂田銀時は椅子に座ったまま机に脚を掛けて休んでいた。顔にはジャンプが開いたまま掛かっている。読み途中なのだろうか。しかし当の本人は深く眠り込んでいるため、それが真実かは分からかった。
「銀さんちょっと…いつまで寝てるんですか?僕そろそろ帰りますけど」
志村新八が声を掛けるが、返事が無い。この社長は全く以ってものぐさである。そして身に沁みついた怠け癖たるや、もはや攘夷戦争の時の白夜叉、というあだ名は何処に行ってしまったのか皆目見当もつかなかった。
返事のない銀時を尻目に、新八はため息を吐いた。
銀時に帰ります、というメモ紙を書いて、新八は帰ろうと玄関の前で草履を履く。すると、玄関の扉がガラガラと開いた。
「…悪い、邪魔する。万事屋はいるか」
そこにいたのは真選組副長、土方十四郎その人だった。
新八は少なからずとも驚いて、「わあ、土方さん」と声をあげてしまった。その声に、土方は悪いな、とだけ言った。その瞳はいつもと違い、何だか寂しそうに見える。どうしたのだろう、真選組の事はこの前伊東鴨太郎という男の殉死で事が決着したのではなかったか。新八はそう思いながらも銀時のいるリビングへ戻る。
「銀さん、銀さん、起きてくださいよ、もう。何回言わせれば起きるんですか、全くもうホントに!」
「…うーるっせェなァ…さっきからもう。新八、お前は…」
「お客さんですよ、起きてくださいってば」
「んー、依頼ィ?なんでこんな夕方によォ…明日じゃダメなの」
「それが、土方さんが」
「え」
銀時の眉が少しだけ上がるのを、新八は見逃さなかった。
「土方君?何で」
「僕も分かりませんけど…とにかく」
「悪いな。あんまり遅いから邪魔させてもらったぜ」
後ろから、土方がリビングに入って来ている。銀時はその姿をじっと見つめていた。
「どーしたの、副長サン。巡回?それともこないだの」
思ってもないことを言いながら、銀時は土方の姿を確認する。隊服、切れ長の目、ムカつくほどの存在感。確かに土方十四郎だった。
「…万事屋、お前に話がある」
へえ、と銀時は言う。それから一つ、大きな欠伸をした。
「俺は無いけど」
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