銀土(原作設定)

□相思相愛
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荒い息遣い。
噎せ返る男の匂い。

「…はっ、はぁ…」

「ぅ…あぁ」

男達はどうしてか抱き合い、何故か肌を合わす。寂しさがあるのか、殺しの記憶を消すかのようにお互い求め合い、果てた。

衣擦れの音が、なぜか悲しく聞こえる。

「…風呂、」

「あー…うん」

短くそう言って浴室に消えたのは、土方十四郎そのひとであった。真選組鬼の副長、と言えばかぶき町の皆が震えるほどであった。しかし、その容姿と来たら淡麗、黒髪はまるで艶やかで、喘ぐ声は艶めかしい。どうも銀時の心を擽るものであったのだった。

「……」

その後ろ姿を見ながら、何故か銀時はため息を吐いた。
どうしてこんなことを続けているのだろう。
侍同士…刀を振るう者同士、女のいない戦場で、傍に居る男で身体を温め合うことはよくある事だった。でも。
こんなにも同じ人物と、長く関係を持ったことなど、銀時は無かったのだった。今までは行きずり、ましてや一回だけの相手…なんて事もよくある事だったのに。

土方十四郎と、一体何回抱き合ったのだろう。

それは数えられないほど、だった。

「何回やったろーなぁ…土方くんと」

呟いて、下着を履く。
気だるく頭を掻いて、銀時は起き上がった。冷蔵庫から、イチゴ牛乳の箱を取って、ごきゅごきゅと一気に飲み干した。土方との情事は、体力がいる。
女を抱くのとは訳が違う――。
なんせ相手は鬼の副長さんなのだ。強情で剛腕で、頭のキレる彼と、どうしてこうなってしまったのか、銀時はあまり思い出せずにいた。

ただ、お互い酒に酔っていた。
それだけは記憶にある。
1回だけと思っていたのに、何度も何度も抱き合う羽目になっているのは、どうしてだろう。

「おい、何ぼーっとしてんだ」

突然声を掛けられて、あ、と変な声が出る。振り返ると、まだ濡れた髪をそのままに土方が居た。

「風呂、先に頂いたぜ」

土方にぽん、と肩を叩かれる。
あんなに嫌いだと思っていた男と、何度も肌を合わせてこうして事後には二人でダラダラと過ごす…のが日常になっていた。

「仕事…はえーの?明日」

土方は少し曇った顔をする。忙しいのだろうか。

「いや」

短くそう言って、銀時が貸した短パンにタオルを引っさげ、土方はソファーに座った。

「じゃあ…ゆっくりしていきなよ。何もねーけど」

そう銀時が言うと、土方はこちらを見つめて「ホントにそーだな」とだけ言った。

コチコチと時計の音が聞こえていた。
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