銀土(原作設定)

□夏の日、残像
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夏の暑さも最高潮のお盆時期。
朝から降っていた雨はやみ、少し蒸し暑くなった夕方、かぶき町の盆踊り大会が開催されていた。

神楽が妙と浴衣を着たい、と言い出したので、銀時は嫌な予感がして神楽と目を合わせないようにしていた。どうせ小遣いをせびられるのだろうと決め込んでいるのだ。
しかし、神楽はそれを知ってか、ソファーで寝たふりをする銀時に間近で話しかけてきた。

「銀ちゃん、浴衣」

「…んあ?お前…お妙にもらったんだろ、それ着て行けよ。因みに小遣いはねェから。行ってこいや」

すると神楽はキラキラと目を輝かせてこう言った。

「違うアル。銀ちゃんも、浴衣着るアル」

「…は?」

はい、と神楽が差し出したのは、白地に絣の入った男物の浴衣だった。

「コレ、アネゴが銀ちゃんに、って」

「俺も行くのかよ…」

遠くでドン、ドン、と太鼓の音が響く。
それを聴きながら、神楽は銀時に一緒に来るようせがんだ。

「たまには銀ちゃんも行くアル。ビールもあるって」

「ビールねェ…行ってももいいけど、今俺金がねーんだよな」

「いつも無いアル」

神楽に言われて、それもそうだと思い立つ。
まあ、あっちに行けば誰かしらにせびるのもありか。
それに、お妙が来るとなるともしかしたら真選組の連中も…

「いーぜ。じゃあ支度するか」

神楽はやった、と言って跳ねた。
定春はその神楽の足音で驚ききゃうん、と一つ鳴いた。






お囃子の音が徐々に近づいて来る。
かぶき町の盆踊り大会は、高台にある広場で行われている。
中々に木々が生い茂っていて、やぶ蚊が町内の人間を悩ませた。

銀時と神楽、志村姉弟は櫓の近くに集合する。

「あっ、銀さん、神楽ちゃん」

神楽は新八の浴衣姿をみて呟く。

「おっ、眼鏡にも衣装、アルな」

「ちょっと神楽ちゃん…もっと他に言うことないのかよ」

自分はと言えば、妙にもらった淡いピンクの浴衣を着てご満悦である。こうしてみると神楽も女の子なのだ、と銀時は思い直す。可愛い所があるものだ。

「銀サン…馬子にも衣装、ですね」

銀時は緩く浴衣を着て、頭を掻いた。

「はは、その言葉そっくり返すぜ。オメーも似合ってんな、それ…ゴリラ王国からの貢ぎ物?」

途端に放たれる重い拳に、本当にゴリラの娘なんじゃないかと思い直す。全くと言っていいほど、この女二人は怪力コンビだ。
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