銀土(原作設定)

□花見だからってはしゃぐと人生迷う
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八重桜が咲き始めた頃。
かぶき町にある桜並木の丘のソメイヨシノは満開になっていた。

絶好の花見日和である。

こんな日には、仲の良い仲間や会社の同僚などがこぞって席を取って花見を楽しむ。

それは真選組も例外ではなかった。

席を取りに来た山崎は、人の多さに辟易する。
こうも人が多くては、どうも席を取るのもやりにくい。かといって、人目のある事、横柄な態度で接すれば真選組の評判に傷がつくというものだ。
大変悩ましいこの問題に、山崎は一人途方に暮れていた。
この大所帯の人数の席は、もう取れないと言っても過言ではなかった。

土方の怒鳴り声が脳内再生されるのを聴いて、山崎は項垂れる。

「あ〜あ。やっぱり怒られちゃうかなあ」

おざなりに敷いたビニールシートの隅に、山崎は重りを置いて風で飛ばされないようにした。しかし、シートはあと五枚もある。
どう考えても同じ場所には取れない、そう思った。

「あれ山崎さん?」

突然声を掛けられて、山崎は振り向く。
そこには万事屋で働いている志村新八の姿があった。
この少年は、とても態度が良い。
万事屋では唯一の常識人と言っても過言ではないだろう。

「新八君、もしかして、お花見?またまた偶然だね」

「そうなんです、神楽ちゃんと姉上がどうしても、って言うから…まずは席取りかなって、僕が下見がてら席を取りに来たんですよ」

新八は手ぶらで歩いているだけだった。

「もう、席は取れたの?」

「はい、あっちに。山崎さんも席取りですか」

山崎はハハ、と笑った。

「取りに来たはいいけど…五枚分なんて取れなくて、この様。もう参っちゃうよ」

「そうなんですか。僕たちが取ったところ、まだ少し開いてますよ。良かったらご案内します」

にっこり笑って案内してくれる新八は、山崎には天使のように見える。

「ホントに?わあ、ありがとう新八君。俺副長に怒られるとこだった…」

山崎はホッと胸をなでおろした。

半分半分になってしまったが、取り敢えず席が取れた。取り敢えず報告の為に土方に連絡を試みる山崎。しかし、電話の音はするだけで一向に土方は出てくれなかった。

「あれ、おかしいな…なんで出ないんだろう」

何度もかけてみるが、どうも出る気配がない。

もしかしたらもう向かっているのかも…

山崎はもともと取っていた席の方へ駆け出した。

「山崎さん、何処へ行くんですか」

走り出した山崎を、新八は軽い足取りで追って行った。
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