銀土(原作設定)
□うらはら(とうね様リク作品)
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いつか、こうなる時がくるとは思っていた。
俺と土方が別れる日。
その日がどんな風に来るのかは、全く予想できなかったんだけど。
…どうやら、俺の方から言わなきゃいけないみたいだな。
「…銀時、お前」
「…もう、これで終わりにしよう」
言葉を紡いでみて、こんなにも心が乱れるとは思わなかった。
「…」
その時の土方の顔が…笑っていたから。
「…そうだな…俺も、それがいいと思う」
柔らかく笑う、俺の黒い恋人はいつものように煙を吐いて、言った。
俺は笑えているか?
お前の瞳に映ってる俺は…
冷たい風が、俺たちの間を通っていく。
風が止んだのを確認して、俺は土方の前から姿を消した。
…まるで今まで何もなかったかのように。
俺が万事屋の自身の机に置手紙をしてからもう一週間が経とうとしている。
きっと今、新八と神楽は俺を探しているんだろうか。
置手紙には、少ししたら戻る、と書いておいた。その前に給料も渡しておいたし、まああいつらなら大丈夫だろう、そう思う。
俺は歌舞伎町の離れにいた。
そこはさびれてはいるが上等の温泉が湧く宿だった。
過激派攘夷志士のアジト。
桂や高杉と並んで、有名な攘夷志士グループ…”獅子舞”というグループだった。
今日もめまぐるしく人が出入りしている…
「よお。銀時」
「…待たせんなよ」
俺は大広間で自分の名を呼ぶ女に悪態をついた。
女の名前は銀杏(いちょう)。
年のころは二十代前半と言ったところか。
このグループの女幹部でもある。
話し言葉は男っぽいが、体つきはとても女らしい。
この前抱いてみたが、見た目とは違って中々の身体だった。
「あたしだっていろいろ忙しいんだ」
銀杏は俺の言葉に反抗しつつ、自身の部屋に誘う。歩き方はとても早足で、ゆっくりと歩く俺は銀杏のかなり後からついて行くことになる。
銀杏の部屋は三階にある。
部屋に入るなり、銀杏はごめん、と俺に謝る。
ドアを閉めて、俺は女に問う。
「…何で謝ってんの」
「怒ってるかと思ったんだ」
「…別に。いーんじゃねーの、幹部なんだから。俺ァ新入りだしなァ」
銀杏は俺の近くに寄ってくる。
「…新入りっていったって、アンタ白夜叉何だろ?伝説の攘夷志士じゃねーか。あたしたちより随分先輩だ」
栗色の髪を揺らして、銀杏は大きい眼で俺を睨む。こう見ると随分背が小さい。かなり下を向いて話している、そう思う…
「あー、そんなこともあったっけなァ…随分昔の事で忘れちまった」
俺は気怠くなって部屋のソファーに腰掛ける。すかさず銀杏は俺の隣に座ってきた。
「…何」
冷たく言うと、銀杏はおずおずと俺の上に乗っかって来る。
そして甘く囁いた。
「銀時…あたし…」