銀土(原作設定)

□チョコレート・ジェラシー
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空気は冷えているが、空はとても澄んで青い。
真選組副長、土方十四郎は空を眺めていた。
毎日の巡回に行くのに、天気は彼にとってとても重要だった。
おなじみの煙草をくゆらし、真選組屯所の中庭をぼんやり眺める。
おもむろに歩き出すと、後ろから声がした。

「おーい。マヨ副長。何さぼってんですかイ」

振り向くとそこには童顔の青年。沖田総悟だった。

「テメー、上司になんて口のきき方してんだ」

「へーへー、そりゃあ失礼しました。巡回、行かないんでィ?」

これから、と土方は答えると、沖田がすかさず言う。

「土方さーん、歩きたばこ、咥え煙草はいけませんぜ。真選組の名が穢れまさァ」

はは、と土方は珍しく笑う。

「そんなもの、とっくに真っ黒だ」

そう言って、土方は車へ向かう。その後を追うようにして沖田は自分も巡回へ向かうため、玄関に向かった。

車に乗り込むと、沖田はエンジンをかけて中を温めた。
土方はドアを開けて助手席に乗り込む。
中は冷え切っていて、土方は寒さで思わず息を吐き出す。白い息が、車の中を走っていった。

「あーああ。煙草くせーなァもう」

沖田が嫌そうに呟く。
それを聞くと土方はチッと舌打ちした。

走り出した車は、街中を駆けていく。
沖田が運転する車に乗るのを、土方は結構気に入っていた。沖田は若いが冷静で、運転が上手い。安心して乗っていられた。

「そういやあ」

沖田が不意に切り出す。
土方は前をただ見ていた。

「今日、バレンタインですねェ」

「…バレンタイン…」

「土方さん、アンタまさか、知らなかったんですかィ?今日がバレンタインだって」

「ん…ああ…別に興味ねーし」

土方は冷たく言い放つ。
男所帯では、あまり縁のない話だった。

「巷じゃあ、恋する女子が好きな男にチョコと私をあげるんでさァ」

はは、と土方は笑う。

「古い考えだなソレ」

沖田は運転しながら横顔で言う。

「まあ、俺たちには縁のない話でェ。でも、きっと甘いもの大好きな旦那はたくさんもらうんでしょうねェ」

土方はピクリ、と反応する。
不意に沖田から銀髪の話をされ、狼狽えているのは明確だった。

「…何ですかィ土方さん。突然黙り込んで」

土方は黙って煙草に火を付ける。
それから、ふーと煙を吐く。

「…分かりやすすぎでさァ土方さん」

笑う沖田に、土方はうるせえ、と凄んだ。
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