その他CP
□Kiss & Cry
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青い空が続くかぶき町の平和な昼下がり。
万事屋の坂田銀時、という男は少女と犬を連れていた。ぽかぽかと暖かい陽気の中、明らかに大きすぎる犬が砂ぼこりをあげている。町の人間たちはもうなれているのか、平気でそのペットを眺めては何事も無かったように去っていっていた。
「は〜、銀ちゃん、定春もそろそろお嫁さん欲しいんじゃないアルか」
可愛く尋ねるそのチャイナ服の少女に、これまた気怠く答える銀髪の男。
「ああ〜ん?神楽ちゃんね、犬は自分で嫁さん見付けてほしいんだよね…つーか俺の方が嫁さん欲しいわ…」
ポリポリと頭を掻きつつ、銀髪は鼻糞をほじってはそれを町中に飛ばす。
「お嫁さんほしいの銀ちゃん、それならアレある、アイツがいいアル」
「え?結野アナ?」
「真選組のマヨラーアル」
それを聞いて、げほごほ、と明らかに狼狽える銀時は、焦った様子で神楽に言う。
「何それ土方君の事?何言ってんの神楽ちゃん、アイツ男だよ…」
「でもワタシ思うに…」
二人が話し込んでいると、どうやら見回り中の真選組に出くわす。
「あ〜旦那、ご無沙汰してまさァ」
銀時は沖田、という一番隊隊長に、親しそうに話し出す。
「あれ、珍しいじゃん巡回?土方君いねーの」
「旦那ァ残念ですが土方のヤローはいませんぜ。どうにもこうにも奴が伏せちまっててねェ、俺達一番隊が駆り出されてる、って訳でさァ」
面倒くさそうに話す沖田という若者を、じろりと睨んで神楽は言う。
「早くトッシー連れて来いよこのチワワが」
「テメー警察にその言いようは勇気があらァな。お望み通り俺がしょっ引いてやらァ、犬ごとな」
「お前が子犬アル、プクク」
銀時は気怠い恰好のまんま、沖田の話を聞いていた。それからおもむろに話し出す。
「ふーん。別に俺ァ興味ねェけど。そんなに具合悪いの、土方君」
沖田は薄く嗤って言う。この意地っ張りにはよくお似合いだ、うちの副長は、と思いながら。
「結構悪そうですねェ」
じっと銀時を見つめてみると、一瞬だけ沖田の方を見、それからすぐに動き出す。面倒くせえ二人だ、そう思いながら沖田は銀時の動向を見つめていた。
「攘夷派とやらかしたみてェでね」
銀時の目の色が変わった。
「まァ、自宅療養してるんで、よかったら見舞いの一つでも行ってやって下せェ」
「なんで俺が。誰かと勘違いしてんじゃねーの」
「毎日暇してまさァ」
その沖田の声を聴きながら、銀時は万事屋のある方向へ歩き出していた。