パラレル
□SEE YOU
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年明けから、クラスの皆は浮足立っていた。
進路が決まってはしゃぐ者、まだずっと勉強し続けている者、だらけて勉強しない者、教習所に通いだす者…
そんな中で、近藤がクラスの皆に言いだした。
「受験も大切だが、ここで息抜きにカラオケで盛り上がるってのはどうかな。きっと心も晴れてまた受験に精が出る気がするんだがな」
「どうせ近藤さんの目的は志村だろ」
俺が呆れて言う。
「そーですかィ。まーだ手ェ出してなかったんですか。奥手だなァ」
「なにその二人の余裕の表情?まさか、まさか盛ってんの俺だけ?童貞なの俺だけ?」
「馬鹿か。何言ってんだよ」
「俺ァそんなのとっくでさァ。M女の調教じゃあ俺の右に出るものはいねェ」
「調教とかそんなのじゃ無いからね?総悟…」
近藤は乗り気で、クラスの女子やら男子やら、様々な生徒を誘っていく。ああ、もうほんとにだるい。こんなのに参加しろとか言われたらどうしよう。
「近藤さん、悪いけど俺は」
「なーに言ってんのトシ、お前が来ると来ないじゃ参加の女子人数が違うんだから必ず来てもらうから」
肩をつかまれて言われると、それ以上逆らえない。
全くこの人は人を振り回すのがうまい。
「じゃあ俺ァチャイナを誘いまさァ。あの跳ねっ返り、今度こそ俺の言うこときかせてやりてェ…」
はあ、とため息を吐く。
どいつもこいつも、決まったも同然で話を始めている。俺は明らかに不快感を表そうと、ため息をついた。
「勘弁してくれ」
「だめでさァ。クラスでいい思い出作りましょうぜ。銀八も呼んだら、来るんじゃねーですかィ?」
俺は心臓が跳ねるのを必死で隠す。
「おお、いい案だなァ総悟。誘ってみてくれ。最後だし先生も来てくれるだろう」
うんうん、と頷く近藤。沖田はバタバタと銀八のところへ走っていく。どうやら早速参加を伺いに行くのだろう。俺は見て見ぬふりをした。
もし、銀八が来たら。
俺は嬉しいのだろうか。それとも銀八を独占したくなるのだろうか。他の生徒達を睨んでしまいそうで、不安が募る。俺は何でこんなに余裕が無くなるのだろう…
それでも銀色が来てくれることを願う。遠く離れたところからでもいい、何かの陰に隠れて先生の事が見られたら、どんなに心が安らぐだろう。
「じゃあ、週末はカラオケ行くから空けといてくれよトシ」
俺は曖昧に返事をして、トイレ、と近藤に告げ教室を出て行った。