おはなし

□例え、今の関係を壊してでも
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たとえ、今の関係を壊してでも

カノキド短編1
 



僕とキドの関係は、幼馴染みであり、兄妹つまり「家族」でもある。
その関係はセトにも当てはまることでもあり、とっても心地のよい関係。
養父であるケンジロウさん以外、親のいない僕らにとってのずっといっしょに暮らしてきた大切な家族。
ときに喧嘩するときもあったけれども、お互いに嫌い合うことはなく、ずっと助け合って生きてきた。
どれだけ酷い喧嘩をしても「死んでしまえ」とか、相手の存在を否定するようなことは一度も言わなかった。
というより、言いたくても言えない。
その言葉でこの関係が崩れてしまうことがわかっていたから。

二人もこの関係が続くことを望んでいる。
僕も、ずっとこの関係が続くことを願っていた。つい最近までは。
                             
桜も散り始めた、四月のとても暖かい日の昼下がり。
空は青く澄み渡っている。
今日は如月兄妹が遊びに来ていた。
いつもシンタロー君のスマホの中にいた、エネちゃんはいない。

―僕達は半年前の八月十五日。数えきれないほど、ループを繰り返していたカゲロウデイズを無事に攻略したのだ。
姉ちゃんも、アヤカさんもキドのお姉さんも僕のお母さんもみんな帰ってきた。
もちろんハナコも。
キドなんかお姉さんの姿を認めたとたん、泣き出しちゃって宥めるのが大変だった。
カッコつけて皆の前では泣くのを必死で我慢するのに、お姉さんの前では普通にわんわん泣いて。なんかムカついた。

コノハ君は遥君に戻り、今は入院している。
寿命はあと一年もなかったのだが「醒める」能力のおかげか、奇跡的に病気は良くなっていき、ついに先週完治した。
その報告を父さんから聞いたメカクシ団のみんなは大騒ぎ。
遥君そっちのけでアジトで夜まで騒ぎまくり、半分パーティー状態で、ご近所迷惑なんてしるか!って感じ。
気が付くと朝でみんな床やソファーで眠っていた。
キサラギちゃんは涎を垂らしながら。

遥君はとりあえず今は検査入院ということで、今週中には退院する予定。
皆忙しいなか、時間を見つけては少しずつ、退院パーティーの準備を進めている。
マリー、僕、シンタロー君が部屋全体にに飾る飾りを作る担当で、キドは当日の料理。みんな沢山食べるから作る量ももちろん多くて。
一人で作るのはとてもじゃないけど無理なので、僕とキサラギちゃんが手伝いに入る。 
…… 危険なものは撤去しておくから大丈夫なはず

セトは僕達に黙って勝手にバイト増やしやがった。
最近帰るのが遅いとは思ってたけど……まさかバイト増やしてるとは。
キドが怒って大変だったんだから。
「あの馬鹿はいつも無理しやがって…!どんな風に休ませようか」って包丁持ちながら言うんだもん。

「みんなにたくさん食べさせてあげたいっすから」って言葉聞いて少しは怒り収まってたけど。
帰ってくるまで、マリーとアジトの隅っこで布団被って蹲ってたんだから僕の怒りは逆に上がってってたけども

姉ちゃんはあいつと付き合うことになった。赤いあいつと。
勿論、そんなこと父さんも僕たちも許す訳がない。
社会的にも物理的にも血祭りだと殴りにいったが、姉ちゃんとアヤカさんには叶わない。
全員、父さんまでもが大人しくしているしかなかった。
カゲロウデイズのこともあったし、今は一応認めているが、絶対許さない。
今度こそは血祭りだ。覚悟しといてね



 ……今まではあの忌々しき黒い蛇に脅されて、みんなを守るのに必死で全然、自分の気持ちとか考える余裕なんてなかった。
でも、こうして憎たらしい赤のヒーローに救われて、平凡な生活に戻って気が付いた。



――僕は、妹であったはずのキドのことが好きだったんだ。異性として見てしまっていたんだ。と


                                      



目の前には真っ赤な顔をして泣きながら叫ぶキド。夜中ということも忘れて、メカクシさえしていない。

 「俺たちは兄妹だろ!?」

 「うん。兄妹だよ」

 「なら……!」

もう、我慢できないんだ。気付いてしまったこの気持ちは抑えられない。



 ――例え、今の関係を壊してしまっても答えを聞きたい

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